東雲結子:1泊1万5,000円なら、月45万円。普通賃貸9万円より5倍ですね!

石井税理士:30日全部埋まって、清掃も手数料もゼロなら、ですね。

東雲結子:また電卓が夢を見ていました。

石井税理士:今回は電卓を起こして、3つの運営方法を比べましょう。

 

インバウンド需要が強い地域では、普通賃貸を民泊や簡易宿所へ変えたほうが儲かるのでは、と考える大家さんもいるでしょう。宿泊単価だけを比べると圧倒的に見えます。しかし、宿泊事業には清掃、予約サイト、運営代行、光熱費、許可・届出、初期投資がかかります。同じ1室を3通りで回したらどうなるか、仮定を置いて比較します。

普通賃貸は地味。でも、手間と費用も地味

月額家賃9万円、稼働率95%と仮定します。年間家賃入金は102万6,000円です。

管理料を入金家賃の5%、年間修繕予備6万円とすると、比較用の残額は約91万5,000円です。

爆発力はありませんが、清掃を毎回行う必要も、毎日予約を確認する必要もありません。

民泊150泊なら、売上225万円でも残りは約73万円

住宅宿泊事業法の民泊として、1泊1万5,000円、年間150泊、平均2連泊と仮定します。

売上は225万円です。

そこから、予約サイト手数料15%33万7,500円、運営代行18%40万5,000円、清掃75回×4,000円=30万円、光熱費24万円、初期費用120万円を5年で回収する年24万円を引くと、比較用の残額は約72万7,500円です。

この条件では普通賃貸より少なくなります。

簡易宿所240泊なら、約106万円。ただし許可の壁がある

簡易宿所として年間240泊できる前提を置きます。1泊1万5,000円なら売上360万円です。

予約サイト15%54万円、運営20%72万円、清掃120回×4,000円=48万円、光熱費30万円、固定費20万円、初期工事150万円を5年で回収する年30万円を差し引くと、比較用の残額は約106万円です。

この仮定では普通賃貸を上回ります。しかし、旅館業の許可、用途・消防・自治体条例、近隣対応等が必要です。どの物件でもできるわけではありません。

運営方法 年間売上の仮定 費用控除後の比較用残額
普通賃貸 102.6万円 約91.5万円
住宅宿泊事業の民泊 225万円 約72.8万円
簡易宿所 360万円 約106万円

民泊は180日の上限。簡易宿所は許可が必要

住宅宿泊事業法の民泊は、4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で180日までという上限があります。自治体条例でさらに制限される場合もあります。

簡易宿所は旅館業法上の営業で、自治体の許可が必要です。建物の構造や消防設備など、事前に確認する項目が多くなります。

「民泊なら180日以上やればいい」「簡易宿所と名前を変えればいい」という話ではありません。制度が違います。

儲けるなら、単価より「清掃回数」を見よう

宿泊事業で意外に大きいのが清掃回数です。

同じ150泊でも、1泊客150組なら清掃150回。平均3連泊なら50回です。清掃4,000円なら、差は40万円になります。

宿泊単価を1,000円上げることばかり考えるより、連泊してもらう仕組みを作ったほうが利益が増えることがあります。

駅近だけでなく、病院、大学、工場、イベント会場など、連泊需要がある場所を探す。宿泊ビジネスは「1泊いくら」より「1回の予約で何泊してもらえるか」が重要です。

参考資料

観光庁 民泊制度ポータル 180日制限

厚生労働省 民泊サービスと旅館業法Q&A