東雲結子:「募集条件、全部盛りにしましょう。AD2か月、フリーレント、家賃値下げ!」

管理担当:「ラーメンのトッピングではありません」

東雲結子:「早く決まるなら全部乗せで!」

管理担当:「全部乗せすると、大家さんの財布だけ麺抜きになります」

東雲結子:「まず1個ずつ比べます……」

空室が長引くと、「ADを増やしますか」「フリーレントを付けますか」「家賃を少し下げますか」と提案されます。どれも入居を決めるための手段ですが、お金の減り方はまったく違います。今回は家賃6万円の部屋を例に、24か月、60か月という2つの期間で比べます。

2年間だけ見ると、家賃値下げが一番安い?

家賃6万円の部屋が、条件を変えればすぐ決まるという単純な仮定を置きます。

A:AD2か月=12万円
B:フリーレント1か月=6万円
C:家賃を月2,000円下げる=2年間で4万8,000円

この24か月だけを見ると、Cが最も小さな負担です。ところが、値下げは毎月続きます。入居者さんが5年間住めば、2,000円×60か月=12万円。AD2か月と同額になります。

募集条件 24か月の負担 60か月の負担
AD2か月 12万円 12万円
フリーレント1か月 6万円 6万円
家賃2,000円値下げ 4万8,000円 12万円

家賃値下げは、長期入居ほど効いてくる

ADやフリーレントは、原則として最初に1回だけ発生する費用です。家賃値下げは、入居が続く限り毎月発生します。

「長く住んでくれる人ほどありがたい」のが賃貸経営ですが、値下げという施策だけ見ると、長期入居ほど大家さんの負担は積み上がります。さらに、その部屋の賃料が低い状態で更新されれば、将来の値上げ交渉にも影響します。

反対に、短期退去が多いエリアならADやフリーレントを毎回出すことになり、こちらが高くつく場合もあります。

AD2か月は高い。でも1.2か月早く決まるなら?

24か月の比較では、AD2か月の負担12万円と家賃2,000円値下げの負担4万8,000円の差は7万2,000円です。

家賃6万円なら、7万2,000円は1.2か月分。つまり、AD2か月にすることで「値下げ案より1.2か月以上早く入居が始まる」と合理的に見込めるなら、ADのほうが収支で勝つ可能性があります。

ここが大事です。ADの良し悪しは「2か月は高い!」ではなく、「その2か月分で何日、空室を短くできるのか」で考えるのです。

仲介会社には「決まりそうですか?」ではなく、この3つを聞く

募集条件を変えるときは、仲介会社に次の3点を聞いてみてください。

・今の条件で問い合わせは何件あるか
・内見後に断られた理由は何か
・AD、フリーレント、家賃のうち、どれが現場で効きそうか

問い合わせ自体がゼロなら写真や募集チャネルの問題かもしれません。内見は入るのに決まらないなら、室内や家賃が原因かもしれません。原因が違えば、効く施策も変わります。

募集条件は「コスト」ではなく、空室日数を買うお金

私はADやフリーレントを、単なる損失ではなく「空室日数を短くするために払うお金」と考えます。

そのお金で30日短くなるのか、3日しか変わらないのか。そこが分かれば、使う価値も見えてきます。

大家さんの募集条件は、派手さではなく回収期間で決める。これだけで、管理会社との打合せがかなり具体的になります。

 

参考資料

国土交通省 賃貸住宅標準契約書