まとまったお金ができると、アパートローンを少し返したくなりませんか。

借金が減るのは、たしかに気持ちがよいものです。ただ、返した100万円に「給湯器が壊れたので、一度戻ってきて」とお願いしても、簡単には呼び戻せません。

繰上返済は、将来の利息を減らす代わりに、今使える現金を減らす判断です。大家さんの場合は、節約できる利息と、返済後に修繕や空室へ対応できる余力を一緒に見ておきましょう。

同じ100万円でも毎月の返済額は同じように減りません

一部繰上返済には、毎月の返済額をおおむね維持して完済を早める「期間短縮型」と、返済期間を変えず毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」があります。利用できる方法や最低返済額は、金融機関・契約によって確認が必要です。

具体的に比べてみましょう。次は、残高3,000万円、残り20年、固定金利年2%、元利均等返済のローンで、今すぐ元金100万円を繰上返済する仮の計算です。元利均等返済は、元金と利息を合わせた毎回の返済額を一定にする方式です。ボーナス返済はなく、手数料・違約金・税金への影響は含めません。

比較する項目 繰上返済なし 返済額軽減型 期間短縮型
毎月の返済額 約15万1,765円 約14万6,706円 約15万1,765円
残りの返済回数 240回 240回 231回
今後の利息合計 約642.4万円 約620.9万円 約594.3万円
減らせる利息合計 ― 約21.4万円 約48.0万円

月利を年利の12分の1として計算し、表示額を四捨五入しています。差額は丸める前の金額から計算しています。期間短縮型は最終回の返済額を約3万7,193円に調整した試算です。実際には金融機関の計算方法や契約条件によって変わります。

返済額軽減型なら、毎月の支払額が約5,059円減ります。期間短縮型では完済が9か月早まりますが、それまでは毎月の負担がほぼ変わりません。

「毎月の通帳を楽にしたい」と考えて期間短縮型を選ぶと、目的と結果がずれてしまうわけです。利息の削減額が大きいという理由だけで決めず、いま欲しい効果を先に決めてください。

利息が減ると必要経費も減ります

税金の確認も一つ。個人の不動産所得では、賃貸用物件を取得するための借入金の利息は必要経費になります。一方、元金の返済部分は必要経費になりません。100万円を繰上返済しても、その100万円を経費にすることはできません。

さらに、支払利息が減れば、その分だけ必要経費も減ります。黒字で課税されている大家さんなら、所得税等の負担が増える場合があります。

たとえば、ある年に利息が2万円減り、その差額に対する所得税・住民税等の負担割合を仮に合計30%とすると、税金は6,000円増え、税引後の改善は1万4,000円です。上の返済表とは別の、仕組みを説明するための例です。

もちろん、経費を増やすために利息を払い続ければよい、という話ではありません。節約した利息を丸ごと手残りの増加として計算しない、ということです。赤字や繰越損失がある場合などは影響が異なるので、自分の申告内容に合わせて見積もります。

返済後に残る預金はいくらですか

繰上返済に回せる額を考えるときは、まず納税予定額、近い将来の修繕代、空室が続いた場合の支払資金を確認します。

たとえば、預金250万円のうち、半年以内の納税と工事で140万円を使う予定なら、予定のない部分は110万円です。ここから100万円を返すと、追加の支出に回せるお金は10万円になります。預金残高は150万円あっても、大半には行き先が決まっているのです。

緊急予備資金をいくら持つべきかは、棟数、設備、家賃収入、ほかの預金や借入余力で違います。誰でも家賃の何か月分、と一律に決めるより、実際に起こりそうな支出を並べたほうが判断しやすくなります。

銀行に頼むのは二つの返済予定表

返済を検討するなら、まず金融機関に、同じ金額で期間短縮型と返済額軽減型の試算をお願いしてみましょう。併せて手数料、違約金、保証料の返戻、申込期限を確認します。商品によっては、金利の選択状況などで手数料が異なります。

比較するのは、将来の利息合計、毎月の支払額、返済直後に残る現金です。上の約48万円は、長い期間にわたる利息の削減額であって、返済したその日に48万円もうかるわけではありません。

手元資金が十分なら返済を進める。近く大きな工事があるなら一部だけ返す。予定が固まるまで待つ。それぞれ理由のある選択です。借金の残高を小さくする前に、残したい現金の額を決めておきましょう。

参考資料

[1] 住宅金融支援機構「繰上返済(賃貸住宅融資の場合)」。二つの一部繰上返済方法、手続き、繰上返済制限制度に関する条件。利用時は個別の契約条件を確認。

[2] 国税庁「令和6年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」2ページ(2024年10月1日現在の法令等)。借入金利子と元本返済の区別。

[3] 高知銀行「商品説明書 賃貸住宅ローンⅡ」2ページ(2025年4月1日現在)。金利区分・返済金額によって異なる繰上返済手数料の一例。本文の試算は同行の商品条件を再現したものではありません。