「入居して欲しい。でも、毎日の見守りまで自分でできるだろうか」。
高齢者からの入居申込みを前に、そんな心配をしたことはありませんか。
家賃の管理、修繕の手配、生活相談。全部を大家さん一人の担当にしたら、管理業務の一覧表がどんどん縦に伸びてしまいます。
そこで知っておきたいのが、2025年10月1日に始まった「居住サポート住宅」の認定制度です。支援を担う人と連携し、安心して住める環境を整えることは、大家さんにとって募集の選択肢を広げる検討材料にもなります。
見守りを支援者と分担する住宅です
居住サポート住宅は、大家さんと居住支援法人などが連携し、日常の安否確認、訪問等による見守り、必要な福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。日常生活にサポートを必要とする、住宅確保に配慮が必要な方の居住を支える仕組みで、高齢者だけが対象ではありません。
認定を受けるには、事業計画を作り、自治体の審査を受けます。住宅の面積や耐震性、設備、支援内容などに基準があり、三つの支援を必要とする方のための専用住宅を、計画内に1戸以上設けることも必要です。「空室の募集欄に見守り付きと書けば完成」という制度ではありません。自治体によって基準が異なる部分も確認しましょう。
ここで大家さんが確認したいのは、支援者の名前以上に、実際に何をしてくれるかです。異変を把握したときに誰が連絡を受け、必要な支援先につなぐのか。休日の対応はどうするのか。居住サポートの費用と、訪問や緊急対応の追加料金はどうなるのか。
契約や運用を詰める相手が見つからないまま、募集条件だけを変えると、結局大家さんの仕事が増えてしまいます。まず物件所在地の自治体の住宅担当窓口や居住支援法人に、連携できる相手を相談しましょう。
費用は「空室が何か月減れば見合うか」で確認
支援を付けることによる経営上の効果は、追加家賃と大家さんが負担する追加費用を比較して考えます。例えば、同じ1年間について、家賃6万円の部屋の空室が3か月短くなり、支援費用を大家さんが月3,000円、12か月分負担すると仮定します。
| 仮定する増減 | 年間の金額 |
| 空室3か月短縮による家賃増 | +180,000円 |
| 大家さんが負担する支援費用 | −36,000円 |
| 初回の手続き等の費用 | −20,000円 |
| 差引きの収支改善 | +124,000円 |
税金やほかの増減費用を除いた単純計算です。料金は実在のサービスの相場ではなく、この例の仮定。空室が必ず3か月減るという予測でもありません。
同じ費用でも、短縮が1か月だけなら改善額は4,000円。短縮できなければ、追加費用の分だけ収支は悪化します。先に地域の入居相談の状況や、候補者に必要な支援を確認することが欠かせません。補助金も、対象や手続きが確認できるまでは収支に入れずに比べておきましょう。
死後の手続きは、見守りとは別に準備する
入居中の支援と、亡くなった後の契約や家財の手続きは、分けて考えます。通常の賃貸借では、入居者さんが亡くなると、賃借人としての地位や家財は相続人に引き継がれます。大家さんの判断だけで契約を終わらせ、家財を処分することはできません。
この場面に備えて、国土交通省と法務省は2021年に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。主に単身高齢者の入居時を想定し、本人が、死後の賃貸借契約の解除や家財の処理を受任者に依頼する仕組みです。
見守りサービスを頼めば、この手続きも自動的に付いてくるわけではありません。誰が受任するか、何を残して誰に渡すか、処理費用をどう確保するかまで確認します。
本人と受任者が内容を理解し、同意することが前提です。 解除の代理権を大家さん自身に持たせることは、利益が対立するおそれがあるため避けるべきとされています。契約の必要性や適切な相手を、支援法人や法律の専門家と検討してください。
年齢の前に、受け入れるための条件を並べてみる
高齢者を受け入れるすべての住宅が、居住サポート住宅の認定を受けなければならないわけではありません。一般の賃貸住宅でも、必要に応じた見守りや、適切な死後事務の契約を検討できます。
物件の階段や室内の使いやすさ、家賃の負担、必要な支援は、一人ひとり違います。年齢だけで判断する前に、本人の希望と支援体制を具体的に確認したいところです。
募集を広げるなら、管理会社への最初の質問は「高齢者は大丈夫ですか」だけで終わらせず、「どんな支援があれば、この物件で安心して暮らしていただけますか」にしてみましょう。大家さんがすべてを背負わずに受け入れられる条件を探すことが、住まいを探す方にも、長く空いている部屋にもプラスになります。
参考資料
[1] 厚生労働省「居住サポート住宅情報提供システムの公開」(2025年9月30日)。2025年10月1日の制度開始、対象、支援内容、認定主体について。
[2] 国土交通省住宅局「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律等について」(2025年6月、厚生労働省掲載)。認定基準と支援の仕組みについて。
[3] 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について」(2021年6月7日)。一般の賃貸借の相続とモデル契約の利用場面について。
[4] 国土交通省「(別紙)残置物の処理等に関するモデル契約条項について」(2021年6月7日公表)。受任者、利益相反への配慮について。
[5] 全国賃貸住宅経営者協会連合会「残置物の処理等に関するモデル契約条項」家主向けリーフレット(2021年6月版、厚生労働省掲載)。入居者と受任者による理解・同意と、利用場面の確認について。































