「エアコンが動きません」。

入居者さんからの連絡に、修理の見積書を見て、大家さんのほうが冷や汗……。
できれば避けたい場面ですよね。

そこで、6万円の業者と6万3,000円の業者を比較。
「もちろん6万円で」と決めたくなりますが、復旧までの日数は同じでしょうか。

賃貸住宅の設備故障では、修理代のほかに賃料減額が問題になることがあります。見積書の金額と復旧日を一緒に見ると、選び方が変わるかもしれません。

故障した設備と、暮らせなくなった程度を確認する

ここでは、大家さんが設備として提供しているエアコンについて、改正民法が適用される契約を考えます。入居者さんが自分で取り付けたものや、契約上の扱いが異なるものは別途確認が必要です。

民法611条では、借主の責任ではない事情で物件の一部が使えなくなったとき、使えない部分の割合に応じて賃料が減額されます。「大家さんに過失がなければ減額なし」とは限りません。一方、どんな小さな不具合でも同じ扱いになるわけではなく、通常の生活への支障を見ます。

ですから、「エアコンが故障したので今月の家賃はゼロ」「修理を頼んだので家賃は満額」のどちらも、早押しで決める話ではありません。季節、部屋の状況、使用できなかった期間などを確認し、入居者さんと減額の程度や方法を話し合います。

2020年4月より前から続く契約は、その後の更新の仕方によって適用関係が変わることがあるため、契約の経緯も確認しましょう。

修理代3,000円の差が、総負担では600円になる例

日本賃貸住宅管理協会の2024年10月版ガイドラインでは、エアコンが作動しない場合の目安を、家賃の10%、免責日数を3日としています。ただし、法定の割合や日数ではありません。季節・地域・設置台数、部品の調達事情などに応じて調整する参考値です。

この目安をそのまま用いることで双方が合意したと仮定して、月額家賃9万円、1か月を30日として比べてみます。両社とも同じ品質の修理を行い、修理代は税込みの支出額とします。

比較する項目 A社 B社
修理代 60,000円 63,000円
使用できない日数 15日 7日
計算対象の日数 12日 4日
仮定した賃料減額 3,600円 1,200円
修理代と減額の合計 63,600円 64,200円

A社の減額は、9万円×10%×12日÷30日=3,600円。B社は同じ計算で1,200円です。

修理代だけなら3,000円高いB社も、家賃の減少まで含めると差は600円。この仮定では、600円の追加負担で不便な期間を8日短くできます。税金やほかの補償は含めていません。

もちろん、これは修理を15日待たせてもよいという基準ではありません。生活への支障が大きいときには、代替手段を含めて早急に対応する必要があります。金額は現場の状況で変わるので、この表を入居者さんに示して一方的に精算することも避けましょう。

大家さんの返事待ちで、工事を止めていませんか

復旧が遅れる原因は、業者の空きだけとは限りません。型番が分からない、交換の承認が取れない、入居者さんとの日程調整が止まっている。こうした待ち時間なら、事前に減らせます。

管理会社には、号室ごとの機種・設置年・保証の有無を共有しておきましょう。交換が必要になりそうな機器は、設置寸法や電源も記録しておくと、見積りを取り直す手間を減らせます。

もう一つ決めたいのが、修理を発注する権限です。「税込み○万円までなら管理会社の判断で発注」「超える場合は写真と見積りを送る」など、管理契約に合わせて承認手順を決めます。緊急時の連絡先も含め、管理会社と書面で共有しておくと安心です。

物件の設備を修理するために、まず大家さんの承認ルートを修理する。少し地味ですが、買い替えより先にできる対策です。

修理の報告は、入居者さんへの連絡までが一組

不具合を受け付けた日時、確認した症状、訪問予定、復旧した日時を残し、予定が変わったらその都度伝えます。待っている人に「連絡がない」という不安まで追加しないためです。

代替機器などを用意する場合も、それで生活への支障がどこまで解消するのか、費用や減額をどう扱うかを話し合って記録します。代替品を置けば自動的に減額が不要になる、という意味ではありません。

まずは管理会社に「設備故障の連絡から発注まで、どこで私の返事待ちになりますか」と聞いてみてください。修理単価を下げる工夫と同じくらい、止まっている時間を短くする工夫が、賃貸経営の支出と入居者さんの暮らしを守ります。

参考資料

[1] 国土交通省「改正民法施行に伴う 民間賃貸住宅における対応事例集」(2021年3月、4頁・11〜15頁ほか)。民法611条、適用関係、減額・代替手段の協議について。

[2] 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(2024年10月4日)。法的拘束力のない目安。本文の比較表は当該目安を参考に作成した独自の仮定計算。