同じ名前のアパートで、管理会社も同じ。通帳には家賃がまとめて入ってくる。そんな物件なら、土地の相続税評価も全部まとめてよさそうですよね。

ところが、税務上は「その土地を、どこからどこまで一組として評価するか」という確認が先にあります。電卓をたたく前に、敷地図を広げる出番です。

登記の「一筆」と、評価の「一画地」は別のもの

登記上、土地を数える単位が「筆」です。一方、相続税評価でいう「一画地」は、利用の単位となっている一つの区画を意味します。

一筆の土地だから評価も一つ、何筆もあるから評価もその数だけ、とは限りません。国税庁は、貸家が数棟ある貸家建付地について、原則として各棟の敷地ごとに評価すると説明しています。[1]

ここでいう貸家建付地は、借家人がいる貸家の敷地です。土地そのものを貸して相手が建物を所有する「貸宅地」とは、確認する権利関係が違います。似た名前なので、最初に整理しておきたいところです。

一括借上げの契約書が1冊ある場合も、それだけで土地全部の評価単位が一つになるとは決まりません。契約の表紙より、中身と実際の使い方を見ていきます。

まずは、建物と駐車場の「担当範囲」を調べましょう

架空の物件で考えてみます。全部で540㎡の土地に、独立した北棟と南棟があり、管理資料を整理すると次のようになったとします。

現況を整理した部分 面積の仮定 追加で確認すること
専ら北棟の敷地として使う部分 260㎡ 北棟の入口、専用駐車区画との関係
専ら南棟の敷地として使う部分 220㎡ 南棟の入口、道路への出入り
両棟で使う通路など 60㎡ 利用実態、契約、各棟の敷地との関係
合計 540㎡ 全体の面積と一致するか

これは、税務上の区分を確定した図ではなく、検討を始めるための現況整理です。とりわけ共用部分は、付け足しのように見えて大事な部分。両棟に60㎡ずつ加えれば二重計上になり、どちらからも外せば土地が消えてしまいます。

駐車場についても、北棟だけの利用か、両棟の入居者が混在して使うのか、外部の人にも別契約で貸しているのかで確認事項が変わります。「アパートの隣だから全部同じ扱い」と急がず、駐車位置と契約の対応を確かめましょう。

建築図面は頼れる資料。でも、現地との答え合わせも必要です

貸家ごとの区分を考えるときは、建物が構造上・機能上独立しているか、借りている人の利用範囲がどうなっているかが重要です。

2012年の東京地裁判決でも、2棟の独立性に加え、前面駐車場の利用状況や道路からの出入りなどを確認し、各敷地を別の画地として評価しています。建築確認の図面だけでなく、相続開始時の実際の状況を見ている点が参考になります。

ですから、建築確認時の配置図、公図、賃貸借契約書、駐車区画図を重ねて、「今もこの使い方ですか」と現地で確認する作業が必要です。途中で駐車区画を入れ替えた、通路を付け替えたという変更も、図面へ反映させてください。

なお、フェンスがないから建物の床面積で機械的に割ればよい、ということでもありません。共用部分の扱いは、その物件の利用実態や権利関係を踏まえて根拠を整理します。

「分けると安くなる」より、正しい範囲をつかむ

評価単位が変われば、道路との関係、奥行き、土地の形など、評価の前提も変わります。そのため、区分の誤りは評価額の誤りにつながりますが、分ければ必ず相続税が下がるわけではありません。

税額が安くなる線を先に引くのではなく、利用状況と権利関係から評価する範囲を決める順番が大切です。国税庁は、通常の用途に使えないような著しく不合理な遺産分割の場合、分割前の画地で評価する取扱いも示しています。

今日できることは、管理会社から最新の配置図と駐車場契約一覧を取り寄せ、各棟の入口・通路・駐車位置を書き込むことです。家族に引き継ぐのは建物の鍵だけではありません。「この物件をどう使っているか」が分かる一枚も、相続準備の役に立ちます。

参考資料

[1] 国税庁「宅地の評価単位」(令和7年8月1日現在、回答要旨・特に(5))

[2] 国税庁「税務訴訟資料 第262号-121(順号11971)」(東京地方裁判所、平成24年6月20日判決、第3・3(2)、26~27ページ)