敷地を歩いても、名義の境目に線は見えません。ところが登記を確認すると、「北側は自分だけ、南側は夫婦で半分ずつ」ということがあります。

相続税を試算するとき、この二つをまとめて計算してよいのでしょうか。

答えを出すには、地図と登記の両方が必要です。「隣同士だから一つ」「名義が違うから必ず別々」。どちらも、結論を急いでいます。

面積を足す前に、誰の権利があるかを確認

相続税では、宅地を利用の単位である「一画地」ごとに評価します。土地を自由に使うことを制約する他人の権利があるか、その権利の種類や権利者は同じか、といった点を見て判断します。

単独所有の土地と、ほかの人が持分を持つ共有地では、権利関係が同じではありません。例えば、共有地全体を自分一人の判断だけで売ることはできません。土地評価を巡る裁決でも、共有かどうか、共有持分の割合などは、評価単位を判断する際に考慮する事情とされています。

ここで大切なのは、登記を相続開始前の状態だけで止めないこと。遺産分割で誰がどの土地・持分を取得するのかも、評価単位の判断に関係します。

家族の間では「全部うちの土地」で話が通じても、評価では一歩細かく確認する必要があるのです。

ただし、権利の境目だけで切れない場合もあります

架空の例です。北側160㎡は父の単独所有、南側200㎡は父と母が2分の1ずつ所有しているとします。

二つの土地をそれぞれ独立して使える場合と、両方にまたがる一つの建物の敷地として貸し付けている場合。名義の組合せは同じでも、調べる内容は変わります。

確認する点 別の単位を検討する事情 一体の単位を検討する事情
実際の利用 各土地が別々に機能している 全体が一つの施設のために使われている
借りている人の権利 利用範囲や契約が区分されている 全体に及ぶ契約・利用関係がある
分割後の利用 独立して別用途に使える事情がある 一部分だけ切り離して使うことが実質的に難しい

この表は、自動判定表ではありません。現地と契約を調べるための見取り図です。

2012年の裁決は、単独所有地と共有地が含まれていても、遺産分割の前後を通じた一体利用や権利関係を踏まえ、全体を一つの評価単位とする場合があることを示しています。

ただ同じ大家さんが管理している、同じ会社へ貸している、という一点だけで決める話ではありません。何を一体として貸し、どのような利用が続くのかまで確認しましょう。

「共有だから、さらに値引き」とはなりません

もう一つ、混同しやすいことがあります。

一つの土地として評価する範囲を決める作業と、その中の誰の持分を相続財産に計上するかという作業は別です。両方を一度に考えると、電卓の上で土地が伸び縮みしてしまいます。

国税庁の取扱いでは、共有地の各人の持分は、その共有地全体の価額に持分割合を掛けて評価します。[3]

例えば、適切な評価単位の判定を経て、南側の共有地全体の評価額が2,800万円になったと仮定します。父の持分が2分の1なら、父の持分の評価額は1,400万円です。

ここから「共有持分だけでは売りにくそうだから」と、任意にさらに3割引きする計算ではありません。共有であることと、相続税評価の上で自由な値引きができることは、つながっていないのです。

また、一体評価をする場合でも、相続していない母の持分まで父の相続財産に入れるわけではありません。評価する範囲と、課税される権利の範囲を分けて整理します。

一枚の図に「持分」と「貸し方」を書き込みましょう

準備するのは、各土地の登記事項証明書、公図や配置図、賃貸借契約書、遺産分割の案です。

図の上に、所有者と持分割合を書き、建物・入口・通路・駐車場を配置します。さらに、誰にどの範囲を貸しているかを記入してください。名義だけの表より、一体利用の事情がずっと伝わりやすくなります。

評価単位によって土地の形や道路との関係も変わるため、正しい判断は、過大な評価と過少な申告の両方を防ぐ出発点になります。「まとめた方が安いか」より先に、「実際にどう使い、誰の権利がどこに及ぶか」を確認してみませんか。

まずは隣り合う土地の登記を並べるところから。意外な持分の違いを見つけたら、それが相続準備を進めるよいきっかけです。

参考資料

[1] 国税庁「宅地の評価単位」(令和7年8月1日現在)

[2] 国税不服審判所「平成24年12月13日裁決」(特に5(2)イ・評価単位について)

[3] 国税庁「共有地の評価」(令和7年8月1日現在)