「孫の将来のために、家賃収入の一部を贈っておこう。でも、まだ通帳を任せる年齢ではないし……」
そんな大家さん。子どもが自分で通帳を管理できるまで、贈与を待たなければならないわけではありません。大切なのは、誰が子どものために受け取り、誰のお金として管理するかです。
今回は、個人から未成年の子や孫へ、負担の付いていない現金を贈る場面を考えましょう。
通帳を作ることと、贈与することは別の手続き
贈与は、「あげます」という意思と「受け取ります」という意思が合って成立する契約です。贈る側が子ども名義の口座を作り、そこへお金を移しただけでは、その合意まで説明できるとは限りません。
幼い子どもについては、親権者などの法定代理人が、子どものために贈与を受ける手続きを行えます。法定代理人とは、法律に基づいて本人に代わって法律行為をする人です。
実際、2021年の国税不服審判所の裁決には、母親が子の法定代理人として贈与を受諾し、子名義の通帳等を管理していた状況を踏まえ、預金を子の財産と認めた事例があります。判断されたのは、その家族の具体的な経緯です。「親が通帳を持っているから必ず名義預金」と決めつけるのも早いのです。
贈与契約書には、誰のための署名かも書いておく
書面がないだけで、贈与が直ちに成立しなくなるわけではありません。ただ、何年も後に「これは誰のお金?」と聞かれたとき、記憶だけで説明するのは大変です。
贈る人、受け取る子、金額、贈与日、受諾の内容を記録し、代理人が署名する場合は、その立場も分かるようにしておきましょう。父母双方が親権者である場合など、誰がどの資格で手続きするかは、家族の状況に応じて確認します。
例えば祖母から孫へ贈るなら、「祖母の口座から孫の口座へ振込」「孫のために親権者が受諾」「以後は孫の財産として管理」という流れが、資料を並べて分かる状態にします。契約書だけ立派でも、お金が祖母の生活費に自由に戻っているようでは、説明がつながりません。
子どもが大きくなったら、贈与の経緯や口座の内容も伝えていきましょう。資産と一緒に、その資産ができた理由も引き継ぐイメージです。
110万円の枠は、贈る人ごとに増えません
ここで、金額の確認も一つ。暦年課税では、受け取る人ごとに、その年の贈与を合計して基礎控除110万円を使います。祖父の110万円と祖母の110万円を、別々に使える仕組みではありません。
8歳の孫が2025年中に次の現金を受け取ったとします。他の贈与や非課税特例はなく、暦年課税の一般税率を使う架空の例です。
| 確認する項目 | 金額 |
|---|---|
| 祖父から受け取った現金 | 80万円 |
| 祖母から受け取った現金 | 50万円 |
| その年の贈与の合計 | 130万円 |
| 基礎控除を差し引いた金額 | 20万円 |
| 贈与税 20万円×10% | 2万円 |
それぞれが「110万円以下だから大丈夫」と思っていても、受け取る側で合流します。年末の振込前に、家族で今年の贈与額を確認してください。

図1 受け取る子どもの年間合計で確認します。本文の仮例による独自計算。
年末の振込を、ひと手間だけ丁寧に
9月のうちに、今年贈った金額、受け取る側の手続き、振込記録、贈った後の管理を一度そろえてみましょう。分からない箇所は「要確認」とし、確認できた事実と記憶を分けて残します。
孫への贈与は、口座の名前を変える作業だけではありません。「あなたのためのお金です」と、受け取る側へ確かに届けること。その準備をしておけば、将来、通帳を手渡す日にも説明しやすくなります。
参考資料
[2] 国税庁「令和6年分 贈与税の申告のしかた」35〜36頁。暦年課税、一般税率、基礎控除。本文の税額は独自の仮例による計算です。































