住宅の家賃には、原則として消費税がかかりません。ところが、アパートを売却すると、その後の年の消費税の取扱いが変わることがあります。

結論は、「家賃が非課税だから、建物を売っても消費税と無関係」とは考えられない、ということです。売却する年の納税義務と、売却によって将来課税事業者になるかどうかを分けて確認しましょう。

家賃と建物の売却代金は取扱いが違います

住宅として貸す家賃は原則非課税ですが、賃貸事業に使っている建物の売却は、消費税の課税対象となる取引です。土地の売却代金は非課税なので、一棟物件を売るときは、土地と建物を分けて考えます。

ただし、売却した人がその年の免税事業者であれば、建物を売ったというだけで、その売却代金について消費税を納めることにはなりません。課税対象の取引であることと、実際に納税義務があることは別の話です。

そのうえで見落としたくないのが、将来の判定です。

判定に使うのは売却益ではなく建物の売却代金です

例えば、日本に住む個人の大家さんが、2025年に次の条件でアパートを売却したとします。2025年は免税事業者で、インボイス登録や課税事業者の選択など、他の課税事由もないものとします。

項目 金額
建物の売却代金 1,500万円
建物の帳簿価額 1,200万円
差額 300万円

 

差額の300万円は、売却費用などを考慮する前の数字です。ここで消費税の課税事業者判定に使うのは、この300万円ではなく、建物の売却代金1,500万円です。

個人事業者は、原則として、その年の前々年を「基準期間」として、課税売上高が1,000万円を超えるかどうかを確認します。現行制度に当てはめると、上の例では、2027年の基準期間が2025年となり、2025年の建物売却によって1,000万円を超えるため、2027年は課税事業者になります。

免税事業者だった年の課税売上高は、売却代金から消費税相当額を差し引かずに判定します。この例なら1,500万円をそのまま使います。また、この売却があったことを理由に、2025年へさかのぼって消費税がかかるわけではありません。

また、2026年については、前年の一定期間の売上げ等で判定する「特定期間」のルールを別に確認する必要があります。国内の事業者は、原則として、その期間の課税売上高に代えて給与等支払額で判定することもできます。「必ず翌々年だけ」と覚えないことが大切です。

課税事業者になっても住宅家賃が課税になるわけではありません

2027年に課税事業者となっても、住宅家賃の非課税という取扱いは変わりません。その年に住宅家賃しかなければ、家賃に消費税を上乗せして納める、という話ではありません。

申告が必要かどうかも、課税事業者に該当するかという判定だけで決めるわけではありません。課税売上や特定課税仕入れがなく、納付税額もない場合には、確定申告の義務がないとされています。特定課税仕入れは、国外事業者から受ける一定のサービスなどに関する仕組みです。
一方、その年に別の建物を売ったり、課税となる店舗家賃などがあったりすれば、申告・納税の検討が必要です。過去に控除した税額の調整や、課税事業者となる場合の届出も別途確認します。「家賃しかないから何もしなくてよい」とは考えないようにしましょう。

売却するときは翌年以降の予定まで見ておきましょう

確認したいのは、売却する年の課税・免税、土地と建物の金額、翌年以降の売却や事業の予定です。

法人では事業年度を基準に判定するため、個人の年表をそのまま使うことはできません。通常の1年決算法人なら、原則として前々事業年度を確認します。

物件を売った年の所得税や法人税だけでなく、その売却が次の取引にどのような影響を与えるかまで整理しておくと、売却後の資金計画を立てやすくなります。

 

参考資料

[1] 国税庁 No.6226 住宅の貸付け

[2] 国税庁 No.6931 消費税等と譲渡所得

[3] 国税庁 No.6501 納税義務の免除

[4] 国税庁 No.6605 納付税額がないときの確定申告

[5] 国税庁 基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定

[6] 国税庁 令和7年分 収支内訳書 不動産所得用 の書き方 3ページ