「決算では利益が出ているのに、銀行口座のお金が増えていない」
こんなとき、まず確認したいのが、借入金の返済と減価償却費の関係です。
不動産経営では、利益と手元に残るお金は一致しません。帳簿上は黒字でも、返済後のお金がほとんど残らないことがあります。
借入金の返済は 全額が経費になるわけではありません
毎月のローン返済には、借りたお金そのものを返す「元金」と、お金を借りる対価である「利息」が含まれています。
賃貸経営のための借入金の利息は原則として経費になりますが、元金の返済は経費になりません。元金は、帳簿上の借入金を減らす支払いだからです。
一方、減価償却費は、建物などの取得費を一定の方法で各年の経費に配分するものです。通常、その年に同じ金額の現金を支払うわけではありません。
つまり、元金返済は「お金が出ていくが、経費ではないもの」、減価償却費は「経費になるが、その年に同額のお金が出ていくわけではないもの」です。この違いが、利益と手残りの差を生みます。
400万円の黒字でも 手残りがゼロになる例
個人の大家さんが、次の条件で賃貸経営をしていると仮定します。家賃は全額入金済み、経費と利息は年内に支払済みで、新規借入、物件購入、設備投資、敷金の受払いなどはないものとします。
| 項目 | 利益の計算 | 現金の増減 |
| 家賃収入 | +1,000 | +1,000 |
| 管理費や固定資産税など | −300 | −300 |
| 借入金の利息 | −100 | −100 |
| 減価償却費 | −200 | 0 |
| 借入金の元金返済 | 0 | −600 |
| 合計 | +400 | 0 |
利益は「1,000万円−300万円−100万円−200万円=400万円」です。ここでいう利益は、青色申告特別控除などを差し引く前の金額です。
しかし、この1年間の現金の増加額は「1,000万円−300万円−100万円−600万円=0円」。預金残高そのものがゼロという意味ではなく、この年の賃貸経営から現金が増えないという意味です。ここから所得税や住民税の支払いが発生すれば、その分の資金が別途必要になります。
この例の条件では、「利益400万円+減価償却費200万円−元金返済600万円=税金支払前の手残り0円」とも確認できます。実際には、未収家賃、設備投資、新規借入などの増減も調整します。
減価償却が減る年にも注意が必要です
他の条件が同じで、減価償却費だけが200万円から100万円に減ったとしましょう。
利益は400万円から500万円へ増えますが、所得税等を支払う前の手残りは0円のままです。家賃が増えたわけではないのに、税金の計算対象となる所得は増えることになります。
そのため、今年の決算だけを見るのではなく、数年先の減価償却費と返済額を並べて確認することが大切です。
利益を減らす前に 資金繰りを確認しましょう
手残りが少ないときに、税金を減らすためだけに支出を増やすと、資金繰りがさらに苦しくなることがあります。
まずは、物件ごとに家賃の入金、運営費、元金返済、利息、税金、予定している修繕の支払いを並べてみてください。金利の見直しや返済条件の相談も選択肢ですが、毎月の返済額だけでなく、総利息や金融機関の条件も確認します。
借入金の元金を返せば、負債は減ります。ただし、そのことと、次の修繕費や納税資金を払えるかどうかは別の問題です。
不動産経営を続けていくには、利益と手元資金の両方を見る必要があります。決算書と返済予定表を並べて、まずはこの違いを確認してみてくださいね。
参考資料
[1] 国税庁 令和7年分 収支内訳書 不動産所得用 の書き方 2ページ 借入金利子
[3] 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき 不動産所得































