東雲結子:佐藤さん、1棟目を買ったんですね。おめでとうございます!

副業大家・佐藤:ありがとうございます。ただ、毎月2万円くらい持ち出しなんです。給与があるので大丈夫かなと。

税理士石井:その2万円は、何のための持ち出しですか?

副業大家・佐藤:えーっと、管理費と返済を払うと少し足りなくて……。

東雲結子:でも、将来は家賃が上がるかもしれませんよね。

税理士石井:上がる可能性はありますが、今の赤字を給与で埋める理由にはなりません。

副業大家・佐藤:たしかに。給与があることで、物件の弱さが見えなくなっていたかもしれません。

東雲結子:給与は安全網であって、物件の共同経営者ではないんですね。

 

サラリーマン大家の強みは、安定した給与があることです。空室や修繕があっても、生活がすぐに破綻しにくい。金融機関からも給与収入を評価されることがあります。ただ、その強みは使い方を間違えると、物件の赤字を長く隠します。毎月2万円、3万円だからと給与から補填し続け、気づけばボーナスも修繕へ消える。これは不動産投資というより、給与で物件を養っている状態です。

毎月2万円でも、10年なら240万円

毎月2万円の持ち出しは、家計の中では小さく見えるかもしれません。年24万円、10年で240万円です。さらに固定資産税、原状回復、給湯器、空室が加わります。購入時に「月2万円なら何とかなる」と思った物件が、実際には年50万円、100万円を給与から吸収することがあります。

最初に確認したいのは、その持ち出しが一時的か、構造的かです。購入直後の入居募集や一時修繕であれば、将来改善する可能性があります。しかし、満室でも家賃から経費と返済を払えないなら、家賃、借入条件、購入価格のどれかに無理があります。

持ち出し 1年間 10年間
月2万円 24万円 240万円
月5万円 60万円 600万円

給与を入れない物件収支を作る

家計簿と物件収支を分けます。家賃入金、管理料、共用電気、水道、保険、固定資産税、修繕、元利返済を物件口座だけで動かします。口座が不足したら、個人からの入金を「事業主借」などで記録し、年間いくら補填したかを見えるようにします。

給与があると、通帳全体ではお金が回っているため、赤字に気づきにくくなります。物件口座を分けるだけで、その物件が自立しているかが分かります。私は、購入後の1年間で個人からの補填額がいくらだったかを、必ず振り返ってほしいと思います。

悪いのは赤字ではなく、改善策のない赤字

駅近の土地を長期保有するため、当初はわずかに赤字を受け入れる。将来の建替えや土地値を狙う。こうした戦略的な赤字はあります。ただし、いつまで、いくらまで、何で回収するかが決まっています。

一方、「そのうち家賃が上がる」「元金が減るから大丈夫」とだけ考える赤字は危険です。元金が減っても、現金がなくなれば持ち続けられません。改善策は、家賃改定、駐車場収入、管理見直し、借換え、売却などです。期限を決め、改善しなければ撤退する条件も用意します。

本業の給与は、次の投資機会を作るために使う

給与の強みは、赤字物件を支えることではなく、修繕予備、次の自己資金、株式など、将来の選択肢を作れることです。毎月5万円を赤字補填へ使うのと、5万円を次の頭金へ積み立てるのでは、5年後の姿が大きく違います。

副業大家が本業を続ける意味は、物件の弱さを隠すことではありません。不動産収入だけに依存せず、良い条件を待てることです。給与があるからこそ、無理な物件を買わない。私はこの使い方が、一番強いと思います。