東雲結子:佐藤さん、1棟目を買って半年。もう2棟目を探しているんですか?

副業大家・佐藤:はい。今のところ毎月5万円残っていますし、勢いがあるうちにと思いまして。

税理士石井:固定資産税と不動産取得税は、もう払いましたか?

副業大家・佐藤:あ……取得税はこれからです。固定資産税も月割りでは見ていません。

東雲結子:毎月5万円の中に、まだ来ていない請求書が住んでいたんですね。

税理士石井:そうです。1棟目が一周する前は、通帳の残高が実力より良く見えることがあります。

副業大家・佐藤:うーん、2棟目を買う前に、まず12か月分を閉じるべきですね。

東雲結子:一年分の季節を経験して、やっと物件と正式に知り合える感じですね。

 

1棟目を買うと、次の物件が気になります。融資が出た経験が自信になり、仲介会社からも新しい情報が届く。毎月の家賃が入ると、早く規模を拡大したくなります。その気持ちはよく分かります。ただ、購入後半年の通帳は、物件の実力をまだ全部見せていません。固定資産税、不動産取得税、繁忙期・閑散期、退去、年次点検、確定申告。少なくとも一度は一年を回さないと、本当の手残りが見えないのです。

購入直後は、家賃だけ先に入ってくる

購入直後は、前所有者が修繕した直後だったり、満室で引き渡されたりして、収支が良く見えることがあります。一方、不動産取得税は後から、固定資産税は翌年度、設備故障は入居者が使い始めてからやってきます。

半年で30万円残っていても、取得税40万円、固定資産税30万円、原状回復25万円が来れば、年間では赤字です。月次キャッシュフローを12倍するだけでは、年次費用と突発費用を落とします。

2棟目の前に閉じたい「最初の12か月」

1棟目について、実際の家賃入金、空室日数、管理料、修繕、税金、保険、元利返済を12か月分集計します。決算書の利益だけでなく、個人から追加した現金も確認します。

さらに、次の5年で予想される大規模修繕を年割りします。年60万円残っていても、5年後に300万円必要なら、その60万円は自由に使える利益ではありません。2棟目の自己資金へ回す前に、1棟目が自分の修繕費を積み立てられているかを確認します。

2棟目前に確認する数字 確認する理由
直近12か月の実入金 募集家賃ではなく実績を見る
年間税金・保険 月次表で漏れやすい
修繕・原状回復 購入時想定との差を確認
個人からの補填額 物件が自立しているか
5年修繕予定 手残りの使い道を確定
税引後CF 給与還付に頼らない収支を見る

 

銀行が貸してくれることと、買ってよいことは別

サラリーマンは給与属性があるため、1棟目の運営実績が短くても2棟目の融資が出ることがあります。これは大きな強みですが、銀行が見ているのは返済可能性であり、投資採算の保証ではありません。

1棟目の持ち出しを給与で補填しながら2棟目を買うと、空室や修繕が重なったとき、給与一つで二棟を支えることになります。2棟目の判断は「借りられる額」ではなく、「一棟目が悪化しても二棟目を持てるか」で行います。

買わない半年が、遠回りとは限らない

良い物件が出たら、実績が一年ないから必ず見送る、という意味ではありません。強い立地、十分な自己資金、確かな修繕履歴があり、厳しいケースでも回るなら、進む判断もあります。

ただ、焦りの理由が「早く規模を増やしたい」だけなら、半年待ってもよいと思います。その半年で、家賃相場、管理会社、設備の弱点、自分の時間の使い方が分かります。2棟目は1棟目の延長ではなく、リスクが重なる瞬間です。少し立ち止まることが、結果的に一番速いこともあります。