東雲結子:簡易宿所なら年中営業できます。1泊1万2,000円×365日で……すごい売上です!
税理士石井:うーん、365日すべて満室で、故障も清掃も休みなしの世界ですね。
東雲結子:電卓の中の宿は、口コミも全部星5つです。
税理士石井:現実の宿には、閑散期と固定費があります。
東雲結子:えーっと、では黒字に必要な宿泊数から逆算します。
税理士石井:そうですね。1室なら約308泊、稼働率約84%という仮定です。
東雲結子:えっ、思ったより、ずっと忙しい宿ですね。
税理士石井:だから、物件を買う前に単価、部屋数、固定費のどれを変えれば成立するか考えます。
住宅宿泊事業の民泊には年間180日の上限がありますが、旅館業法の簡易宿所は、許可を受ければ同じ上限ではありません。その分、用途、消防、設備、人員、運営の負担が重くなります。
1泊1万2,000円という数字だけでは判断できません。変動費と固定費を分け、黒字に必要な宿泊数と稼働率を逆算します。
固定費240万円を、1泊7,800円で回収する
宿泊単価1万2,000円、変動費率35%と仮定すると、1泊あたり固定費回収へ回るのは7,800円です。年間固定費180万円、初期投資300万円を5年で回収する年60万円を加えると、年240万円が必要です。
240万円÷7,800円で約308泊。1室なら稼働率約84%が必要です。かなり高い水準です。
稼働率84%なら、単価・費用・部屋数のどれかを見直す
必要稼働率が高すぎる場合、単価を上げる、変動費を下げる、固定費を複数室で分担する、初期投資を抑える、といった調整が必要です。
同じ固定費で2室運営できるなら、必要延べ宿泊数308泊を2室で分け、1室154泊、稼働率約42%になります。ただし清掃や備品の変動費は室数に応じて増えます。
許可が取れる前提で物件を買わない
旅館業許可、用途地域、建築基準法、消防法、自治体条例を確認します。購入後に許可が取れなければ、普通賃貸へ戻した収支でも成立するかを見ます。
行政への相談、消防設備見積り、建築士確認、運営代行見積りが揃うまで、売買契約を急がないことです。
年平均84%ではなく、弱い月の資金繰りを見る
繁忙期100%、閑散期40%でも、年平均だけでは資金繰りが分かりません。月別の単価、稼働率、予約サイト手数料、光熱費を作り、最も弱い3か月で固定費を払えるか確認します。
宿泊事業は、黒字でも現金が不足することがあります。税金、修繕、設備更新の支払時期を月別へ落とします。
売上最大化より、赤字にならない稼働率を先に出す
繁忙期の売上写真は魅力的です。しかし投資判断では、損益分岐点を先に出します。何泊売れなければ赤字になるかを知れば、予約が弱い月に価格を下げる判断もできます。
宿泊事業は、夢の売上を計算するより、弱い需要でも生き残る仕組みを作ることが先です。
| 仮定 | 金額・率 |
| 宿泊単価 | 1万2,000円 |
| 変動費率 | 35% |
| 年間固定費 | 180万円 |
| 初期投資回収 | 60万円/年 |
| 必要宿泊数 | 約308泊 |
| 1室の必要稼働率 | 約84% |
参考資料































