東雲結子「排雪代を節約したいんですが、冬の雪って、売れませんか?」

除雪業者「買い手、います?」

東雲結子「『天然100%、産地直送』って書いたら……」

除雪業者「直送するのに、雪を運ぶお金がかかりますよ」

東雲結子「しまった。排雪代を『送料』に改名しただけだ」

除雪業者「では、出品ページを閉じて、駐車場の図面を開きましょう」

10月の駐車場で、東雲さんと除雪業者さんが冬の段取りを相談しています。話題は、これから積もる雪をどう運び出すか。雪そのものは無料でも、重機とトラックには費用がかかります。節約の手掛かりは出品文句より、雪の置き場所と契約の中身にあります。

雪国の賃貸経営では、除雪代の安さだけでなく、駐車場を使える状態で保つ費用まで考える必要があります。今回は「定額と都度払いの比較」「雪置場と駐車料の関係」「追加請求を減らす決め方」を、数字で見ていきましょう。

雪はどけても消えません。「除雪」と「排雪」の役割分担

敷地の雪をどかして通路などを確保するのが除雪。その雪をトラックなどで敷地外へ運び出すのが排雪です。「除排雪一式」と書いてあっても、積込み、運搬、搬出先の費用、回数、量まで同じとは限りません。

国民生活センターも、作業の範囲や料金、別料金が生じる条件、作業できなかった場合や設備を壊した場合の対応を、書面で確かめるよう案内しています。 一式という言葉は便利ですが、雪の量まで無限に吸い込む魔法の袋ではありません。

配置図には、駐車区画だけでなく、玄関・ごみ置場までの通路、避難の動線、設備、雪置場、重機やトラックが入る位置を描き込みます。雪が増えたとき、どの位置までなら置けるかも、業者さんに現地で確認してもらいましょう。

この確認は、契約中の駐車区画を勝手に雪置場へ変えるためのものではありません。必要な通路を確保したうえで、当初から使える雪置場と、適切な排雪の計画を決めるためです。雪を積める「空いている面積」と、積んでも支障のない面積は違います。

その安さ、どこまで込み? 出動条件と作業範囲をそろえよう

「A社は安い、B社は高い」。その前に、二社が同じ仕事を見積もっているか確認します。駐車場の機械除雪だけの価格と、玄関前の手作業・排雪まで含む価格を比べると、安さの理由を読み違えます。

比較する項目 先にそろえる条件 決めないと起きやすいこと
出動の判断 積雪の基準、測る場所、自動出動か依頼制か 互いに連絡待ちになる
作業範囲 駐車場、玄関前、ごみ置場、道路側の出入口 必要な場所が別料金になる
時間と再訪問 通常の時間帯、車が動かない場合、遅延時の連絡 作業のやり直しが発生する
排雪の条件 回数、対象量、積込み・運搬・搬出先の費用 回数は同じでも運べる量が違う
定額の対象 契約期間、回数上限、豪雪時・期間外の取扱い 定額と思った部分に追加請求が出る

たとえば「積雪10cmで出動」は、あくまで契約条件の例です。前回作業からの降雪を測るのか、敷地のどこで測るのか、降り続く日は一日何回までかで、仕事の量は変わります。共通の基準だと思い込まず、現場で使える言葉に落とし込みます。

札幌市は、道路を除雪した際に出入口へ残る雪の処理について、各家庭へ協力を求めています。[2] アパートでは、その部分を管理会社が手配するのか、除雪業者の契約に含めるのかを決めておくと、担当者不在の仕事を減らせます。なお、屋根の雪下ろしは、地上の除雪と当然に同じ契約だと思わず、別に確認してください。

18回が分かれ目? 定額と都度払いを比べてみよう

以下は相場ではない、説明用の架空の税込料金です。作業範囲と出動条件、排雪する量、契約期間は同じとします。

A社は除雪一回6,000円、排雪一回3万円。B社は一シーズン16万8,000円で、条件に該当する除雪には回数上限がなく、A社と同じ量の排雪二回を含む設定です。

シーズン中の除雪回数 A社:都度払い+排雪二回 B社:定額 安い方との差
12回 132,000円 168,000円 A社が36,000円安い
18回 168,000円 168,000円 同額
24回 204,000円 168,000円 B社が36,000円安い

A社の料金は「6,000円×回数+60,000円」。B社との差がゼロになるのは、(168,000円−60,000円)÷6,000円=18回です。

ここで「今年は17回だからA社!」と断言できる電卓があれば、大家業より気象予報で人気が出そうです。実際には、同じ出動基準での過去の記録を使い、少雪・通常・多雪の幅を見ます。定額にする価値は、平均的な安さに加え、支出の振れを抑えられる点にもあります。

ただし、上の例では同じ条件にそろえるため、B社に除雪回数の上限を設けていません。現実の定額契約がすべてこの条件という意味ではありません。追加排雪の単価や量、作業体制も含めて比較しましょう。少雪なら返金されるのか、途中解約できるのかも契約次第です。

駐車場2台分を増やして、残るのは4,000円?

次は雪置場の使い方です。安全な通路と必要な雪置場を確保できることを前提に、追加排雪によって、新たに駐車区画を貸せる案を考えます。すでに貸している区画を一方的に使えなくする想定ではありません。

仮に一台月8,000円で、冬の四か月すべて借り手がいるとします。追加排雪は二回、合計6万円。それ以外の費用差や税金、手数料を除いた比較です。

追加で貸せる区画 四か月の駐車料収入 追加排雪費 差引きの増減
一台分 32,000円 60,000円 −28,000円
二台分 64,000円 60,000円 +4,000円

二台分なら一応プラスですが、余裕は4,000円だけ。一台が一か月空くだけで8,000円減り、差引きはマイナスに転じます。「駐車場が二台分増える」と「二台分の料金を四か月確実にもらえる」は、同じではありません。

もちろん、既存の入居者が通勤できる状態を保つための排雪まで、この表だけで省いてよいわけではありません。契約上必要な対応と、追加の収益を狙う案を分けて考えます。前者には安全と契約を守る意味があり、後者には需要を確認する作業が必要です。

この表が教えてくれるのは、「排雪は高いから嫌」で終わらせず、いくらの追加費用で、何台分を、何か月使えるようにできるかまで計算しよう、ということです。

その追加料金、誰がOKした? 雪の朝の電話リレーを防ごう

雪が積もった朝に、大家さん、管理会社、業者さんへ順番に電話をかける。それだけで一仕事です。緊急連絡先と、追加作業を承認できる人・金額の範囲を事前に共有しておきましょう。

たとえば「予定外の排雪は、量・金額・実施日を管理担当が確認してから承認する」「危険が迫るときの連絡と応急対応は別に決める」といった形です。これは契約の組み立て例で、どの現場でも同じ金額や手順が適切という意味ではありません。

作業後は、日付、作業範囲、排雪量の確認方法、写真、追加承認の記録を請求書と照合します。[1] 毎回大作の報告書を求める必要はありません。何に対する請求か分かる記録があれば、二重請求や「頼んだ・頼んでいない」の行き違いを見つけやすくなります。

10月のうちに縁石、車止め、外灯、配管の位置を写真に残すことも有効です。雪が積もってから「この下に何かありましたっけ?」となると、探索ゲームの景品が修理代になりかねません。破損時の連絡、業者の保険で対応できる範囲、補償の手順も確認します。

雪より先に、予備費を積もう。「もう2回」に備える冬予算

年間予算には、契約した基本料金とは別に、追加排雪などの予備資金を見込んでおきます。予備資金を自分の口座に残すだけで、税務上の経費が発生するわけではありません。「使える現金を確保する話」と「実際の支出をどう処理するか」は別の管理です。

先ほどの例なら、基本契約と別に追加排雪二回分6万円を確保する、といった置き方です。必要額は敷地と契約条件で違います。使わなければ現金は残り、使えば作業内容と時期に応じて処理します。予算の全額消化で、皆勤賞が出るわけではありません。

費用を減らすために敷地の雪を道路へ出したり、入居者の車を路上へ逃がしたりする方法は選べません。札幌市も、道路への雪出しの禁止や、路上駐車が除雪を妨げることを案内しています。

今月は、去年の作業記録と駐車場の図面を一緒に広げてみてください。雪置場・基本契約・追加作業の三つを整えると、安い見積り探しだけでは見えなかった改善点が出てきます。 冬の自分を助けるのは、秋のうちに確認した一枚の図面かもしれません。

参考資料

[1] 国民生活センター「除雪・排雪サービス 料金や作業内容を事前によく確認!」(2024年12月5日公表。作業内容・料金・破損時対応の確認と記録。一般消費者向け情報の契約確認上の着眼点を応用したもので、事業者に消費者向け制度が適用されることを示すものではありません)

[2] 札幌市「札幌の冬のルール・マナー」(2022年12月16日更新。出入口に残る雪への協力、道路への雪出し、路上駐車。具体的な契約・採算例は本記事独自の仮定)