
東雲結子「トランクルーム、需要はあります。第一号のお客さんは私!」
管理担当「何を入れるんですか?」
東雲結子「ダンベルとキャンプ道具。買った日だけ、意識が高かった皆さんです」
管理担当「ご近所にも、借りたい方はいますか?」
東雲結子「……アンケートはまだ私一人です。満足度100%!」
管理担当「回答者と集計係、同じ方ですね」
東雲結子「調査結果が身内に甘い! まず外の人にも聞いてきます」
自宅の収納に困ると、「同じように困っている人は多いのでは」と思いますよね。空き店舗をトランクルームに変える発想は、そんな身近な不便からも生まれます。ただ、自分の荷物が多いことと、お客さんがお金を払ってくれることは、分けて考える必要があります。
今回は、既存建物の屋内区画を収納用に貸す場合に限定し、実際に貸せる面積、必要な契約数、やめるときのお金まで計算します。屋外に置くコンテナの規制や採算は、別の検討です。
「場所を貸す」と「荷物を預かる」。似ていて違う責任の話
広告では、どちらもトランクルームと呼ばれることがあります。しかし、大家さんが何を引き受けるのかは違います。
| 比較する点 | 寄託を受けて保管する事業 | 収納スペースを貸す事業 |
| 契約の中心 | 預かった物品を保管する | 区画を使えるように貸す |
| 倉庫業法との関係 | 倉庫業に該当すれば登録等が必要 | 純粋な場所貸しは通常、寄託を受ける倉庫業とは別 |
| 最初に確認すること | 保管責任、施設基準、登録 | 利用ルール、施設管理、実際の運営内容 |
国土交通省も、寄託契約による保管と場所の賃貸借を区別しています。場所貸しなのに、責任を持って品物を預かると誤認させる広告は避けなければなりません。
契約書の表題を「賃貸借」にすれば何でも場所貸しになる、という話でもありません。荷物の受領、出し入れ、保管の引受けなど、実際の運営を示して確認します。登録の要否が不明なら地方運輸局へ相談しましょう。
また、場所貸しだから建物の漏水や設備管理に関する責任まで消えるわけではありません。「責任」という文字を空き箱にしまっても、なくなりません。保険の対象、免責、事故時の対応を契約と運営の両方でそろえることが大切です。
50㎡ぜんぶに家賃を掛け算? ちょっと、通路はどこへ
仮に50㎡の空き店舗があるとします。1区画1.2㎡を25区画つくると、貸せる面積は30㎡。残り20㎡は通路、出入口、設備、間仕切りの厚み等に使う前提です。
50㎡全部を貸せるつもりで収入を計算すると、売上予測を大きく見誤ります。通路をなくせば区画は増えますが、お客さんまで箱詰めにはできません。
この配分は設計基準ではなく、計算用の仮定です。まず建築士と自治体に、用途地域、建物の用途変更、避難経路、床の荷重、消防設備への影響を確認します。収納用の間仕切りが増えることで、出入口や既存設備がそのまま使えるとは限りません。
用途変更する部分が200㎡以下なら、用途変更に伴う建築確認の手続きが不要となる場合があります。しかし、建築・消防の基準まで免除されるわけではありません。工事の内容による別の確認手続きの要否も含めて判断します。
そのうえで、利用者の立場で入口から歩いてみてください。車を停められるか、台車が曲がれるか、階段を通らず運べるか、湿気や温度はどうか。箱が入る広さと、使い続けたい使い勝手は別問題です。
満室17万5,000円。固定費が先に5万円持っていく
今回は自己所有の屋内区画を、25区画に分ける例です。区画は同じ広さ・料金とし、稼働率は「契約中の区画数÷25区画」で考えます。広さがばらばらなら、区画数だけでなく賃料収入ベースでも管理してください。
| 計算項目 | 仮定する条件 |
| 区画と月額料金 | 25区画×1区画7,000円 |
| 満室時の月間売上 | 175,000円 |
| 売上に連動する費用 | 入金額の10%。集金・決済等を想定 |
| 毎月の固定費 | 50,000円。建物関連費、照明・換気、警備、管理基本料等 |
| 開設時の投資 | 2,400,000円。間仕切り・設備・設計等の仮予算 |
| 終了時の撤去・復旧費 | 600,000円。用途を戻すための工事等の仮予算 |
| 比較する期間 | 5年=60か月 |
表は消費税の影響を除いた採算比較で、課税される取引はすべて税抜、固定資産税等はその金額で計算します。所得税・法人税等、借入返済・利息、大家さんの労務費、新たな物件購入費は含んでいません。
住宅家賃は一般に消費税が非課税ですが、独立した収納スペースの貸付料は原則として課税取引です。住宅に従属する倉庫を家賃に含めて貸す場合とは扱いが異なり得ます。課税取引かという問題と、大家さんに納税義務があるかという問題も分けて確認します。[3][4]
実際の手残りは、免税・課税の別、一般課税・簡易課税等の計算方法、仕入税額控除の可否でも変わります。資金繰りは税込の入金・支払いに組み直し、消費税の納付・還付を反映して確認します。税抜表から納付税額だけを差し引く計算にはしません。
利用者に見せる料金は、税や管理費を含めた総支払額で比較しましょう。「月額は安かったのに、申込画面で金額が育った」では、契約の前に離脱されてしまいます。
8区画で黒字。でも、初期費用の回収分まで残せる?
毎月の営業収支だけなら、17万5,000円×稼働率×90%−5万円です。固定費を賄う境目は約31.7%。ここだけ見ると、「8区画くらい埋まれば安心」と言いたくなります。
でも、開設240万円と終了時60万円、合計300万円はどこへ行ったのでしょう。収納スペースでいちばん場所を取る荷物は、初期投資かもしれません。
5年でこの300万円を回収するなら、月平均5万円をさらに確保する必要があります。これは税務上の減価償却費ではなく、投資回収を判断するための配分です。5年後の設備売却収入は見込んでいません。
| 平均稼働率 | 月間売上 | 営業収支 | 開設・終了費の月5万円分も差し引いた残り |
| 50% | 87,500円 | 28,750円 | −21,250円 |
| 70% | 122,500円 | 60,250円 | 10,250円 |
| 90% | 157,500円 | 91,750円 | 41,750円 |
表の稼働率は期間平均なので、小数の区画数を含みます。実際の一時点では区画を半分だけ契約する想定ではありません。
投資回収を含めた境目は、10万円÷(17万5,000円×90%)=約63.5%。実際の契約数なら16区画、稼働率64%で、残りは月800円です。黒字ではありますが、電卓を盛大に祝うには少し早い金額です。
さらに、開設直後から70%が続くとは限りません。最初の6か月が40%、残り54か月が70%なら、5年間の平均は67%。同じ計算で残る金額は月平均5,525円です。稼働率が上がるまでの広告費や無料期間があれば、その分も引きます。
勝つ相手は「家賃ゼロ」だけ? 店舗のまま貸す案とも勝負
収納スペースの計画が黒字でも、区画全体を店舗として貸したほうがよい場合があります。
仮に、店舗として貸した場合に、必要な経費を引いた月3万5,000円が残ると見込めるとします。今回の収納計画でそれを上回るには、開設・終了費の回収まで含め、少なくとも22区画の契約が必要です。22区画×7,000円×90%−10万円=3万8,600円。21区画では3万2,300円で届きません。
比較相手は「今の家賃ゼロ」だけではありません。店舗の募集条件を直す、事務所として貸す、建物全体の改修まで待つ、といった現実的な案も並べます。建物を3年後に建て替える予定なら、5年回収の表をそのまま使うこともできません。
撤去・復旧費60万円も仮の数字です。次にどの用途へ戻すかで工事内容が変わるため、開設見積りと一緒に終了時の見積りを取りましょう。始めるときは箱を入れ、やめるときは見積書が箱いっぱい、では困ります。
満室予想より撤退ライン。発注前に決めておくこと
最初の行動は、近隣の料金表を集めることです。同じ1㎡でも、屋内・屋外、階数、空調、荷物を運ぶ距離、利用時間で条件が違います。割引終了後の料金と初期手数料もそろえ、競合に問い合わせる際は利用条件や空き状況を確認します。表示上の空室数だけから稼働率を断定しないようにしましょう。
次に、施工会社には「避難・消防等を確認した配置で、実際に何区画貸せるか」と「開設から撤去までの費用」を依頼します。設計前の25区画を、確定した売上として扱わないことです。
運営面では、危険物、食品、貴重品などの持込制限、居住・宿泊の禁止、鍵や入退室の管理、漏水時の連絡、滞納や残置物への対応を決めます。滞納したら自由に荷物を処分できる、という自己流のルールにはせず、契約書と適法な対応手順を専門家に確認してください。
最後に、毎月の契約区画数、解約数、広告費、資金残高を記録し、「何か月たって何区画に届かなければ料金や運営を見直すか」を決めます。満室予想を眺めるだけでは、空き箱は埋まりません。大家さんが増やしたいのは区画の数より、投資を回収した後に残るお金です。
参考資料
[1] 国土交通省「倉庫業法施行規則等運用方針」(2024年12月12日までの改正を収録、定義・登録・誤認行為の禁止)
[2] 国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律が令和元年6月25日より施行されます」(2019年6月施行の用途変更手続き・基準適合の解説)
[3] 国税庁「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」(公表年月記載なし、倉庫使用料等の取扱い)
[4] 国税庁「消費税のあらまし」(2025年6月、課税対象・非課税取引・納税義務者)































