「2020年9月に買ったアパート。今年9月で5年だから、そろそろ売ろうかな」
ちょっと待ってください。その「5年」、税金の数え方と合っていますか?
個人が土地や建物を売るときは、売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかを判定します。購入5周年のお祝いをしても、税率の切替えはまだ先、ということがあるのです。
税金の時計は1月1日でいったん止まる
2020年9月15日に購入した収益物件を例にしましょう。2025年9月末に売れば、実際には5年以上持っています。しかし、2025年1月1日まで巻き戻すと、まだ約4年3か月。一般の短期譲渡所得に該当します。
2026年の売却なら、判定日は2026年1月1日。ここで5年を超え、一般の長期譲渡所得になります。2025年9月現在の制度を前提とした比較です。
| 比べる項目 | 2025年中に売却 | 2026年中に売却 |
| 所有期間の判定日 | 2025年1月1日 | 2026年1月1日 |
| 区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
| 所得税等と住民税の合計税率 | 39.63% | 20.315% |
| 課税譲渡所得1,000万円の税額 | 396万3,000円 | 203万1,500円 |
これは、両年の課税譲渡所得を同じ1,000万円と置いた架空の例です。居住用などの特例、所得控除の残額、税額控除は考慮していません。所得税、復興特別所得税、住民税を合計すると、税額差は193万1,500円になります。
カレンダーを確認するだけで、検討すべき金額がずいぶん変わりましたね。
売値にそのまま税率を掛けない
ここでいう1,000万円は、売却代金ではありません。売却代金から取得費、譲渡費用などを差し引いて計算する「課税譲渡所得」です。賃貸建物の取得費では、取得価額から減価償却費の累計額を差し引く点にも注意しましょう。
したがって、「売値が5,000万円だから、税金は約1,000万円」と即決するのは早すぎます。購入時の契約書、減価償却の明細、仲介手数料などを並べて計算する必要があります。
反対に、借入金の残高を引いた残りが、そのまま課税譲渡所得になるわけでもありません。税金の計算と、売却後に口座へ残るお金の計算は、それぞれ作ってください。

図3 個人の一般税率で比較。国税庁の参考資料[1][2]と本文の架空条件から計算。
年明けを待てば必ず得とは限らない
「それなら来年に決まり!」と考えたくなりますが、保有を続ける間には、家賃収入もあれば、利息、修繕、空室のリスクもあります。売値が変わる可能性もあります。
比べたいのは、今年売った場合の税引後の手残りと、来年までの収支を含めて売った場合の手残りです。来年までの減価償却で取得費が減れば、同じ売値でも譲渡所得が増えることも計算に入れます。
また、譲渡の日は原則として引渡日ですが、契約の効力発生日で申告できる取扱いもあります。「登記だけ年明けにすれば大丈夫」とは考えず、契約、決済、引渡しの予定を合わせて確認しましょう。
9月なら、年内の売却と年明けの売却を比べる時間があります。まずは購入日と取得費を確認し、仲介会社に「今年売る場合と、年明けに売る場合の見通し」を聞いてみてください。税率を知ってから交渉に入ると、受け入れられる価格の考え方も変わってきます。
参考資料
[1] 国税庁「令和6年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」21〜23ページ。所有期間、取得費、譲渡所得の計算。
[2] 国税庁「令和6年分 譲渡所得の申告のしかた」31ページ、税額の計算方法早見表。復興特別所得税は[1]20ページ参照。































