管理会社から「入居率90%です」と報告が来たら、どう感じますか?

「あと1部屋か。まずまずですね」と、少し安心するかもしれません。でも、その最後の1部屋が、ほかの部屋の3倍の家賃だったらどうでしょう。

入居率の数字は合っています。ただ、通帳に入る家賃の姿とは、少し違って見えるのです。

今日は、物件の成績表に「金額」の欄を一つ足してみましょう。

1部屋はいつでも同じ1部屋

次の架空のアパートを考えます。9戸は月4万円の単身者向けで、1戸だけ月12万円の広い住戸。単身者向けの9戸は入居中、広い1戸は空室です。

部屋の種類 戸数 1戸の月額家賃 満室なら入る月額家賃 入居中の月額家賃
単身者向け 9戸 4万円 36万円 36万円
広い住戸 1戸 12万円 12万円 0円
合計 10戸 ― 48万円 36万円

戸数で計算すると、9戸÷10戸=90%。

一方、家賃の金額で計算すると、36万円÷48万円=75%です。

同じ物件なのに、成績が15ポイント違います。空室の1戸が、満室時の家賃の4分の1を担っているからです。戸数だけなら小さな空きでも、家賃への影響は小さくありません。

図2 戸数と家賃の金額では、同じ空室の重みが変わります。本文の架空条件による独自計算。

金額で見てもまだ通帳とは違います

ここでいう金額ベースの稼働率は、「入居中の部屋の通常月額家賃÷全戸が埋まった場合の月額家賃」と、この例のために定義しています。共益費、駐車場代、礼金などは含めません。

ただし、この75%も、その月に受け取った現金の割合とは限りません。家賃無料期間があれば請求額は減りますし、支払いが遅れれば入金は遅れます。反対に、前月以前の未払家賃が今月振り込まれることもあります。

敷金や翌月分の前受家賃まで一緒にして「今月はよく入った」と評価すると、また数字が混ざります。

そこで、毎月の管理表には、満室想定の家賃、無料期間などを反映した当月分の契約上の家賃、その当月分について集計日までに実際に回収した額を分けて載せてみてください。対象の月と、含める金額をそろえるのがコツです。

どこにお金を使うかが変わる

この例では、月12万円の空室が1か月埋まると、家賃だけなら4万円の部屋3戸が1か月埋まるのと同額です。

だからといって、その部屋へいくらでもお金をかけてよいわけではありません。必要な工事費、募集期間、借り手の見込みも一緒に確認します。「家賃が高いから最優先」と決めつけず、改善に使うお金と、増える見込みの家賃を比べましょう。

管理会社への質問も、「あと1部屋、どうですか?」から、もう少し具体的にできます。

「この部屋が空くと月の家賃が25%減ります。内見で何を指摘されましたか。いくらかけて何を変える案がありますか?」

数字をそろえると、相談が進みやすくなりますね。

月末だけで満室になっても

月の初めから空いていて、最終日に入居した部屋。月末の入居状況だけなら「入居済み」ですが、その月の家賃を丸々得られたとは限りません。

毎月の比較では、月末時点の入居率と、その月全体の家賃収入を分けて見ましょう。前年との比較でも、満室想定の家賃を変更したなら、その影響を確認します。

入居率は便利な数字です。そこに金額と期間を添えると、大家さんが次に手を打つ部屋が見えやすくなります。次の報告書では、空室が「何戸あるか」に加えて、「どの家賃が止まっているか」も見てみてください。

計算の前提

物件構成、家賃、入居状況は説明用の仮定で、計算は独自のものです。家賃収入の比較であり、利益率や投資利回りを示すものではありません。