「今度の空室対策、無料インターネットにしようかな」
入居者さんの関心も気になりますね。ところで、見積書にある毎月の料金は、空室の1部屋分ですか。それとも建物全体の料金ですか?
ここを飛ばすと、「1部屋決まれば十分」と思っていた計算が、後から少し忙しくなります。入居者さんには無料でも、大家さんの通帳には毎月きちんと請求が来ますから。
今回は、設備を入れる前に、回収に必要な家賃を数えてみましょう。
最初の工事費と毎月の料金をまとめる
10戸のアパートで、次の契約を検討しているとします。すべて説明用の税込金額で、実際の相場ではありません。料金・家賃は5年間一定、滞納なしの仮定です。
| 5年間の支出 | 計算 | 金額 |
| 初期工事費 | 導入時に支払い | 15万円 |
| 建物全体の月額料金 | 1万6,500円×60か月 | 99万円 |
| 合計 | 初期費用+月額料金 | 114万円 |
この例では、入居戸数に関係なく月額料金を払う契約とします。空室が埋まった分だけ料金が増えるのではなく、今いる入居者さんの分も含めて負担するわけです。
114万円。月々の1万6,500円を眺めていたときとは、少し印象が変わりませんか?
必要なのは20か月分の追加稼働
家賃を1戸月6万円、増えた家賃にかかる管理料を税込5%と仮定します。1戸が1か月余分に埋まると、管理料を差し引いた増収は5万7,000円です。
114万円÷5万7,000円=20か月分。
つまり、この設備によって、5年間で合計20か月分の追加稼働が得られれば、想定した支出と増収が並びます。1戸で20か月でも、5戸で4か月ずつでも、合計は同じ。年平均では4か月分です。

図1 設備によって増える家賃だけを数えます。本文の架空条件による単純な現金収支。
ここで数えるのは「設備がなくても入っていた家賃」に上乗せされる分です。導入後に1戸が入居して5年間住んでくれたとしても、その60か月分を丸ごと設備の成果にするのは、さすがに設備を褒めすぎです。
その設備で選んでもらえそうか
「20か月なら回収できそう」と感じたら、次は根拠を探しましょう。
管理会社には、近隣の競合物件の設備、内見後に断られた理由、問い合わせでネット環境を聞かれた件数を確認します。いまの空室の理由が日当たりや間取りなら、ネットを付ける効果は別途検討が必要です。
既存の入居者さんへの聞き取りも役立ちます。使いたいのか、すでに別の回線を契約しているのか。募集のために付けた設備が、実は既存入居者の満足につながる場合もあります。ただし、退去が減る効果を金額に入れるなら、根拠と仮定を分けて考えましょう。
5年後までの請求を想像しておく
見積りでは、契約期間、中途解約時の負担、機器の交換費、故障時の対応、撤去費、売却時の契約の扱いも確認します。通信速度や各部屋までの接続方式も、入居者さんが実際に使う場面で検討したいところです。
今回の114万円には、追加の電気代、更新・撤去費などを入れていません。発生するなら加算します。比較は税引前の単純な現金収支で、減価償却や税効果、お金を払う時期の違いも反映していません。
設備は、付けた瞬間に利益へ変わるわけではありません。契約前に「何戸決まれば」から一歩進めて、「何か月分、今より多く家賃が入れば回収できるか」を出してみてください。営業資料を見る目が、少し変わるはずです。































