「家賃が入っていないのに、確定申告では収入になるの?」

通帳は静かなのに、帳簿の家賃収入だけ増えていく。「まだ受け取っていないんですが……」と言いたくなる場面です。今回は、個人の大家さんの未収家賃を、回収と税金の両方から整理してみましょう。

まずは、通帳と帳簿の「時差」を知っておきましょう

家賃は原則として、契約などで定めた支払日に収入へ計上します。入金が遅れていても、支払日が来れば収入になる、ということです。

ここでは「現金主義の特例」を使っていない個人の大家さんを想定します。この特例には要件と届出があり、自己判断で入金分だけの申告に切り替えることはできません。

例えば、月6万円の家賃が6か月分未入金なら、6回の支払日がその年に到来し、減額などもない場合、原則36万円を収入に計上します。入金は0円でも、帳簿には「まだ受け取っていない家賃」が36万円残ります。

「保証会社に入っているから大丈夫」で止めない

未収家賃を見つけたら、まず確認したいのはこちらです。

帳簿の家賃収入 実際の入金 保証会社への対応
どの月の分を、いくら計上したか 通帳と管理会社の明細で、入金済みの月・金額を確認 保証範囲、連絡先、請求期限、請求済みか、支払予定を確認

保証会社への連絡や請求を管理会社に任せているなら、「保証の対象ですか。請求は済んでいますか。いつ支払われる予定ですか」と、手続きの状況まで確認しましょう。契約書と、いつ・誰に・何を連絡したかの記録もセットで残します。

後日、まだ貸倒処理や所得の減額をしていない未収家賃が入ったら、未収残高を減らします。既に収入に計上した同じ家賃を、入金時にもう一度収入へ計上しないようにしてください。貸倒処理などをした後の回収は、別に税務上の確認が必要です。

半年待てば、自動的に経費になる?

ここは、そう単純ではありません。「滞納が続いている」「連絡がつかない」というだけで、すぐに貸倒損失にできるわけではないのです。

例えば、相手の資産状況や支払能力などから全額の回収不能が明らかになった場合など、税務上の要件を確かめます。敷金や保証会社から回収できる分がないかも確認が必要です。判断材料になる請求書、対応履歴、回収に関する資料をそろえておきましょう。

回収不能になったら、大家さんの「規模」で分かれます

税務上の扱いは、賃貸経営が事業的規模かどうかで違います。建物の貸付けでは、おおむね10室以上、または独立した家屋がおおむね5棟以上などが目安ですが、実態を踏まえた判断が必要です。

  • 事業的規模の場合:回収不能となった年の必要経費にします。
  • 事業的規模でない場合:家賃を収入に計上した年にさかのぼり、所得を計算し直します。

図4 個人の大家さんの判断の流れ。回収不能の要件・事業的規模・所得の限度・期限を確認します。参考資料[3]~[6]から作成。

後者は、今年の帳簿から36万円を消せば完了、とはいきません。過去の申告について「更正の請求」が必要になる場合があります。減額できる所得には限度があり、当初の不動産所得が赤字なら、この処理による減額はできません。

事業的規模でない場合は、更正の請求の期限も確認しましょう。回収不能という後から生じた事実について、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に請求する特例があります。「次の確定申告のときに」と先送りせず、回収不能の判断と一緒に手続きを確認してください。

36万円を経費にしても、36万円は戻りません

必要経費にできたとしても、36万円そのものが税金から返ってくるわけではありません。税額への影響は、所得や税率などによって変わります。

回収できる家賃なら、まず回収することが大切です。毎月「帳簿・入金・保証対応」を照合し、未入金に気づいたら請求を進め、税務処理も確認する。この地道な作業が、大家さんの手元に残るお金を守ります。

 

参考資料

[1] 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」

[2] 国税庁「A1-12 現金主義による所得計算の特例を受けるための手続」

[3] 国税庁「貸倒損失」(通達51-11~51-13)、「回収不能の判定」(通達64-1) / 関連資料

[4] 国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」

[5] 国税庁「事業に至らない規模の不動産貸付において未収家賃が回収不能となった場合」

[6] 国税庁「所得税等の更正の請求手続」、所得税法152条 / 関連資料