そのエアコン、現物はもう取り外したのに、帳簿の中ではまだ「現役」になっていませんか?
新品の選定と工事の手配が済んだら、次は古い設備の帳簿を確認しましょう。法人で賃貸経営をしている場合、実際に廃棄した設備に残額があれば、「除却損」として、その事業年度の損金にできる場合があります。
新しい設備を迎えるときには、古い設備の最後の会計処理も忘れずに。今日は、その確認ポイントを見ていきましょう。
古い設備にも、最後の会計処理があります
設備を買ったときの代金は、通常、何年かに分けて費用にします。これが「減価償却」です。まだ費用にしていない残りが「未償却残高」で、帳簿価額とも呼ばれます。
使い終えた設備を廃棄したら、この残額も確認します。帳簿から外す際の損失が「除却損」。法人税の計算で収益から差し引ける費用や損失を「損金」といいます。
たとえば、店舗に設置し、個別に資産計上していた業務用エアコンを廃棄したとします。取得価額は60万円、廃棄する時点までの減価償却は合計42万円。残りは18万円です。
税務上の残額も同じ18万円で、売却・下取り収入や廃材の価値がないとすれば、この18万円が除却損として損金になる例です。

図2 取得価額60万円のうち、廃棄時に残る18万円を確認する例。除却損と税額還付は別です。
「では、18万円が戻ってくるの?」
そうではありません。18万円は税金の還付額ではなく、税金を計算するときに差し引く損失です。実際の税負担への影響は、その期の課税所得や適用税率などによって変わります。
新しい請求書と、古い台帳をセットにしましょう
交換後の請求書だけを税理士に渡して、ひと安心。そこに古い設備の情報も添えていただくと、除却の確認が進みます。
まずは「固定資産台帳」を開いてください。設備の取得日、購入金額、減価償却の記録などをまとめた一覧です。廃棄したエアコンが、どの行に載っているか探してみましょう。
| 確認すること | 手元にそろえたい資料 |
| どの設備を廃棄したか | 物件・部屋番号、型番、台帳の資産番号 |
| いつ取り外し、廃棄したか | 工事明細、処分を確認できる書類、作業前後の写真 |
| 帳簿にいくら残っているか | 固定資産台帳、減価償却明細、購入時の請求書 |
写真だけ、請求書だけで済ませず、資料同士がつながるように残すのがポイントです。新しい設備の登録とあわせて、廃棄した古い設備が使用中の資産として残り、減価償却が続いていないかも確認しましょう。
「設備一式」に埋もれていたら?
台帳に「エアコン」と書かれていないこともあります。建物や他の設備と一緒に計上しているなら、旧設備に対応する取得価額と償却額を、根拠に基づいて合理的に切り分ける必要があります。
ここで、新品の見積額をそのまま古い設備の金額に置き換えるのは避けてください。購入時の内訳や工事資料を探し、どこまで分けられるか税理士と確認しましょう。根拠のない割合で除却損を計算し、廃棄の事実も確認できなかった法人の裁決事例では、その主張が認められていません。[3]
「今は使っていない」だけでは足りません
空室で使っていない、交換を検討している。それだけでは、廃棄したのと同じ扱いにはなりません。
現物を残したまま除却損を認める「有姿除却」という取扱いもありますが、使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使う可能性がないと認められることなどが必要です。倉庫に置いた、というだけで判断しないでください。
また、「一括償却資産」という特別な方法で費用にしている設備は、廃棄したからといって残額をまとめて損金にできるわけではありません。台帳では、金額と一緒に償却方法も見ておきましょう。
次の設備交換では、新品の見積書を開く前に、旧設備の台帳も一枚。工事会社には廃棄の記録をお願いし、税理士には新旧の設備が分かる資料を渡す。このひと手間で、必要な損失の計上漏れを防ぎましょう。
参考資料
[1] 国税不服審判所「平成27年11月30日裁決」―固定資産の除却損を計上する事業年度の判断(法人税法第22条第3項)
[2] 国税庁「法人税基本通達 第7章第7節第1款 除却損失等の損金算入」―7-7-1、7-7-2
[3] 国税不服審判所「平成24年2月6日裁決」―争点3、除却する部分の金額と除却事実の裏付け































