「役員報酬が高すぎる」

「いやそんなことはない妥当である」

といった点で役員報酬における税務署との争いは非常に多く見られます

 

その原因は、役員報酬を定めた条文にあります

役員報酬を定めた条文の中に「不相当に高額」という文言があり、不相当に高額の場合は、否認されてしまうという内容になっているためです

ただ、この「不相当に高額」という文言は、実に曖昧で、どこからが不相当に高額なのか、どの水準を超えたら不相当に高額という範囲内に入ってしまうのか、基準があるようでないような、そんな印象を与える文言となっています

 

こういった文言、表現は、「不確定概念」というジャンルに括られており、税法の条文の中には、他にもこの不確定概念に当たる文言が多数存在しており、わたしたち納税者を混乱させる原因にもなっています

今回は、そんな不確定概念である、役員報酬の「不相当に高額」をめぐる裁決例があったので、それを取り上げてみたいと思います

 

平成9年9月29位置の裁決事例となります

※裁決とは、国税不服審判所で争われた事件を指します(裁判の一歩手前で争っている状態です)

 

【概要】

パチンコホールを運営するA社の代表取締役Bさんと取締役Cさんがいました

お店の運営自体は、このBさんとCさんが主に取り仕切って行っていました

そして、このBさんとCさんに対しては、役員報酬を支払っていました(金額不明)

加えて、Bさんの親族2人とCさんの親族1人(息子)に対しても、役員報酬を支払っていました

金額としては、年間400万~900万支払っていました(各人に対してか3人の総額かは不明)

その後、税務調査が入り、この3人に対する役員報酬が「不相当に高額」であるということで否認され、更正処分と過少申告加算税が掛けられました

これを不服に思った親族3人が税務署に対して起こした裁決となっています

 

【納税者の言い分】

役員報酬は総会の決議で決められた限度額の範囲内で支払っていたものなので、適正な金額である

過去の税務調査において同様の指摘は今までなかった

3人の職務状況においても、三者三様の貢献をしている

 

【税務署の言い分】

親族3人の役員報酬は不相当に高額である(なぜなら、勤務実態がないため)

同業他社と比較しても不相当に高額である

 

【国税不服審判所が下した結論】

税務署が参考資料として提示してきた類似業種における役員報酬額は妥当である

一方、親族3人の勤務実態は不明確であり、業務執行権もない

A社の売上・利益の伸びに比べて、親族3人の役員報酬の伸び率は相当に高くなっている

これらによって、税務署が下した「不相当に高額」だから否認したという判断は妥当であると最終的な結論を出しました

 

【私の所感】

親族3人の各人ごとの役員報酬が分からなかったですが、通常、役員であれば、役員であるという事実だけで、会社に対して責任を負っており、それに対する報酬として役員報酬をもらうことになります

一方、従業員に支払う給与手当は、労働に対する対価なので、勤務実態に応じて給与をもらうことになります

なので、勤務実態が不明確であるという理由で「不相当に高額」という話を論じるのは、少しずれているのかなというのが私の感覚でした

確かに、あまりに高額であれば、そのはみ出た部分だけ否認されるというのは仕方ないことだと、わたしも思います

こういった場合、役員報酬全額が否認されるのではなく、「不相当に高額」な部分のみが否認されます

今回の取り扱いもそのようなものでした

実は、国税不服審判所というのは、そもそも税務署を引退したOBが主なメンバーとして構成されている組織で、司法試験を合格した法律専門家たちが判断を下しているわけではありません

過去の裁判事例も参考にされているとは思いますが、あくまで、メインとする判断基準は、過去の税務署勤務の経験からによるものだと思われます

(税金事件では、一旦、国税不服審判所を経た後で、裁判へ移行しなければならないという、不可解なひと手間が必要になっています)

なので、そのような人が下した判断が必ずしも正しいものかは分からないので、納得できなければ、裁判まで進むべきものと思います

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