税務署との争いは、法人税でも頻発しますが、それ以上に相続税における「総則6項」をめぐる争いの方が、何かと話題になる気がするので、それを取り上げようと思います

 

実は、この「総則6項」というのは、法律ではなく、相続税の財産評価基本通達に記載があるものになります

この通達とは、法律ではなく、税務署内部での取り扱いが書かれているものとなっているのですが、法律ではないのに、法律のような顔をして私たち納税者に適用されているという点で、やっかいな存在となっています

そして、この「総則6項」に関する裁判事例が多くなってきており、どのような判決が出ているのかという点を知ることは、無用な税の争いや無駄な税の支払いを未然に防ぐうえでも非常に重要になってくるため、知っておく必要があります

 

まずは、その「総則6項」の中身ですが、どのように規定されているのかというと「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」となっています

毎回、問題となるのは、「著しく不適当」という不確定概念になります

つまり、国税庁長官の解釈の匙加減によって、著しく不適当という、「その程度」は、いかようにも変えられてしまうものなので、国側が暴走し、私たち納税者側の財産権の侵害にまで及んでしまうのではないかという危惧です

「著しく不適当」という文言には、明確な境界線がないため、争いが多くなってしまうのです

 

そして、この「著しく不適当」をめぐる争いは、裁判上でいくつも繰り広げられているのですが、納税者が勝った場合もあれば、国側が勝った場合もあります

ただ、近年、複数の裁判例が積みあがってきている中で、その基準の輪郭がぼんやりと浮かび上がってきているのも確かです

 

まず知っておかなければならない裁判例として挙げられるのが、2021年4月のタワーマンション節税をめぐる最高裁判決になります

高齢の被相続人がタワーマンションを2棟購入し、通達に従い申告したところ、国側は総則6項を適用し否認してきました

相続人が申告した評価額と、国側が再計算した評価額の差は、9億円に及びました

そして、結果的に、最高裁は、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが、実質的な租税負担の公平に反する」として、総則6項の適用を認めました

つまり国側(税務署)が勝ったわけです

この事件では、相続税対策のためにタワーマンションを購入するという銀行とのやり取りが物証として出てきてしまった点も納税者側に不利に働いたものとされ、注目されました

 

これにより、税務署側は勢いづき、それまでこの総則6項の適用件数が年1~2件だったところ、この最高裁判決以降は、年10件に跳ね上がったのです

 

ですが、上記の最高裁判決では、「時価と評価額の著しい乖離のみでは、総則6項を適用する合理的な理由にはならない」という判断基準も示されており、この点は私たち納税者にとって一縷の希望となる内容だったという点も注目すべき点だと思います

 

そして、その点が重視されて裁判となったのが、2024年8月の仙台薬局事件です

この事件では、被相続人が自社株売却によるM&Aを進めていたところ相続が発生し、その後、予定通りにM&Aが実行され、自社株評価額が10分の1になるという結果を得たうえで、相続税の申告を行ったところ、「総則6項」の適用により否認されました

ですが、この裁判では、「時価と評価額に著しい乖離があるものの、一連のM&Aには租税回避行為は認められない」と判断され、総則6項の適用は違法とされました

つまり、税務署側が負けたのです

 

加えて、その後、2025年1月17日の東京地裁においても、総則6項の適用をめぐる裁判が行われ、税務署側が負けています

 

これらの判決から共通して導き出せそうな判断基準としては、「時価と評価額の著しい乖離」だけでは適用基準を満たさないこと、そして、「租税回避の意図が明らかかどうか」という点が非常に重要視されるという点が考えられます

そのため、節税目的ではないという点は裁判上において非常に大事な論点であり、加えて、余命告知後であるかどうか、相続発生直後に資産売却しているのかどうか、という点も気にしなければならない点だと思われます

裏を返せば、しっかり長期的な目線で相続税対策を行うこと、そしてそのやり取りを履歴として残さないこと、経済合理性が伴っていること(購入した物件のキャッシュフローがマイナスにならない)、これらを守っていれば、総則6項の適用可能性は非常に低いものと思われます

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