東雲結子:先生、家電量販店で外付けSSDを見てきました。前に見たときより値札が上がっていて、思わず二度見しました。二度見しても、値段は下がりませんでした。
税理士石井:ははは、値札は見つめられても、照れて下がってはくれませんからね。実はバッファローは2026年1月7日に、外付けSSD53型番の希望小売価格を、1月20日から24.3%〜171.5%引き上げると発表しています。
東雲結子:171.5%! メモリーの値段が上がったからですね。メモリー株も上がっているし、バッファローも「メモリー銘柄」の仲間に入れておきます!
税理士石井:うーん、そこが落とし穴なんです。バッファローはメモリーを作る会社ではなく、メモリーを部品として買い、SSDやルーターにして売る会社です。しかもこの発表には、値上げの理由が書かれていません。
東雲結子:えっ、理由なしの値上げ……。大家さんが「なんとなく」で家賃を上げたら、入居者さんに理由を聞かれますよ。
税理士石井:ふふ、だからこそ、理由を推測で埋めないのが決算書の読み方です。2024年5月から2025年11月までの決算短信を読んでも、メモリーの価格についての記述は一つもありませんでした。
東雲結子:じゃあ、会社は利益が増えた理由を何と説明しているんですか?
税理士石井:2025年11月12日に営業利益の予想を45億円から77億円へ引き上げたとき、会社は「前期の値上げ効果が浸透したこと、想定為替より円高の水準に留まったこと、一部商品の原価低減活動が進捗した」と説明しました。
東雲結子:仕入れて、製品にして、売る……。大家さんでいえば、建物を借り上げて部屋を貸すサブリースの会社みたいな立場ですね。
税理士石井:いい例えです。仕入れ値と売り値の差で稼ぐ会社なので、この回はメモリーを「買う側」の決算書を、会社自身の言葉と数字から読み、株価の物差しまで確かめていきましょう。
連載の第5回は、バッファロー(旧メルコホールディングス、東証スタンダード市場・名証、証券コード6676)の決算を読みます。キオクシアホールディングス(以下キオクシア)がメモリーを作る側なら、バッファローはメモリーを買って製品にする側。同じメモリーの値段の波を、反対の岸から見る会社です。
決算は日本の会計基準(日本基準)による連結で、3月決算です(2026年3月期=2025年4月〜2026年3月)。2026年1月31日までに公表された最新の決算は、2025年11月12日発表の2026年3月期第2四半期(中間期、2025年4〜9月)で、同じ日に通期の予想を引き上げました。材料は、決算短信、業績予想の修正のお知らせ、自己株式の取得などの開示、製品の価格改定のお知らせです。
注意したいのは、決算短信と予想の修正のお知らせに、メモリーの価格の話が出てこないことです(2024年5月〜2025年11月、当ブログが確認した範囲。決算説明資料は確認できていません)。この回では、会社が挙げる理由を会社の言葉のまま示し、そのうえで、決算の数字を株式投資の銘柄選びにどうつなげるかもアナリストの目線で整理します。
| この記事の要点 | 根拠となる数字 |
| バッファローはメモリーを買って製品にする側で、メモリ・ストレージ機器は売上の約3割 | 2025年4〜9月の売上高601億円のうち、メモリ・ストレージ機器183億円(30.4%)、卸売品158億円(26.2%) |
| 会社が挙げる増益の理由は値上げ・想定より円高・原価低減で、メモリーの価格には触れていない | 営業利益の予想45億円→77億円(2025年11月12日)、2025年7〜9月の営業利益率9.0% |
| 稼いだ現金は自社株買いに回り、発行済株式数は約2割減った | 発行済株式数1,530万株(2025年3月末)→1,215万株(2025年10月末)、上期の自社株買い74.8億円 |
| 銘柄選びの目線:物差しは低く出るが、会社予想は下期の利益率4.1%を前提にしている | 予想PER8.8倍・PBR1.30倍・株主還元利回り13.32%(2026年1月30日の株価)、2025年の株価+118.8% |
バッファローは、メモリーを買ってSSDやルーターにして売る「買う側」の会社
バッファローは2025年4月1日、完全子会社と合併して、純粋持株会社のメルコホールディングスから事業会社の株式会社バッファローに商号を変えました。2024年10月1日には食品事業(シマダヤ)を株式分配型のスピンオフで切り離しており、2026年3月期からはIT関連の単一セグメントです。
何を売っているかは、商品分野別の売上で見えます。2026年3月期の中間期(2025年4〜9月)の売上高601億円のうち、メモリ・ストレージ機器が183億円で30.4%(商品分野の合計に対する比率、当ブログの計算)。中身は、HDD、NAS、SSD、DVDドライブ、USBメモリー、メモリー、メディアです。
次に大きいのが、AMD製のCPU「RYZEN」などの卸売品で158億円(26.2%)。前年同期を100とすると142.5で、伸びがいちばん大きい分野です。ネットワーク機器が121億円(20.1%)、その他が97.2億円(16.2%)、その他周辺機器が26.7億円、関連サービスが16.3億円と続きます。売上の4分の1強は他社のパソコン部品の卸売です。
商品分野ごとの利益は開示されておらず、どの分野でどれだけ稼いでいるかまでは分かりません。大家業でいえば、物件ごとの家賃収入は分かっても、物件ごとの手取りは分からない収支報告です。
筆頭株主は、株式会社メルコグループ(代表 牧寛之氏)です。大量保有の変更報告書によると、2025年9月5日時点で3,620,279株、保有割合は28.28%で、保有目的は「安定株主としての保有」としています。
メモリーを買う側のもう一社、アイ・オー・データ機器は、MBO(経営陣による買収)により2022年6月16日に上場を廃止しており、株式市場で並べて比べることはできません。
用語メモ:NAND=電源を切ってもデータが残るメモリー。DRAM=電源を切るとデータが消える作業用のメモリー。SSD=NANDを使った記憶装置。HDD=ハードディスク。NAS=ネットワークにつないで使う記憶装置。CPU=パソコンの計算の中心になる半導体。日本基準=日本の会計基準。スピンオフ=事業を切り離して別の会社として独立させること。
バッファローの決算を5年で見ると、営業利益率は8.8%から1.8%まで振れた
| 億円(%) | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
| 売上高 | 1,299 | 1,441 | 1,426 | 1,458 | 1,432 |
| 売上総利益率(%) | 27.2 | 30.5 | 25.2 | 24.7 | 27.5 |
| 営業利益 | 88.5 | 127 | 45.2 | 26.0 | 89.0 |
| 営業利益率(%) | 6.8 | 8.8 | 3.2 | 1.8 | 6.2 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 66.3 | 93.5 | 30.6 | 30.1 | 60.1 |
| EPS(円) | 402.08 | 584.32 | 181.23 | 179.66 | 383.99 |
| 1株配当(円) | 70 | 110 | 120 | 120 | 120 |
| ROE(%) | 13.2 | 16.2 | 4.9 | 4.8 | 11.0 |
| IT関連セグメントの売上高 | 979 | 1,122 | 1,080 | 1,066 | 1,211 |
| IT関連セグメントの利益 | 79.6 | 119 | 34.4 | 3.9 | 75.7 |
※日本基準・連結。各期は4月〜翌年3月(2025年3月期=2024年4月〜2025年3月)。食品(シマダヤ)を含み、2025年3月期の食品は2024年4〜9月分のみ。2022年3月期から収益認識会計基準を適用。比率は売上高に対する割合(当ブログの計算)、ROEは会社の表示。2025年3月期の配当120円は、創業50周年の記念配当20円を含む。
5年で営業利益率が最も高かったのは2022年3月期の8.8%、最も低かったのは2024年3月期の1.8%で、振れ幅は7.0ポイントです。IT関連セグメントの利益は、2022年3月期の119億円から2024年3月期には3.9億円まで落ち込み、2025年3月期に75.7億円へ戻りました。
会社の説明をたどると、2022年3月期は「世界的な半導体不足等による供給面での制約」「半導体を中心とした各種部材の調達難」、利益が落ち込んだ2023年3月期は「円安および世界的な半導体不足に端を発する原価高騰」、2024年3月期は「円安を主要因とする原価高騰」と書いています。繰り返し出てくるのは、半導体の不足と円安です。
会社の説明では、戻りの起点は値上げです。2025年3月期の中間期の決算短信で、「2024年4月1日から一部のパソコン周辺機器の値上げを実施し収益改善を図る」と説明しました。価格改定のお知らせによると、対象は計1,090型番で、個人向けストレージ176型番が2.1%〜101.8%、法人向けストレージ314型番が0.5%〜128.8%の値上げです。
2025年3月期の営業利益は89.0億円で、前期の26.0億円の約3.4倍になりました(当ブログの計算、食品の上期分を含む)。大家業でも、固定資産税や修繕費が先に上がり、家賃の改定が追いつくまでには時間がかかります。2024年3月期の低い利益率と値上げ後の回復は、その時間差の形に見えます(当ブログの見方)。
四半期で見ると、営業利益率は−1.5%から10.3%へ。最新の2025年7〜9月は9.0%
| 四半期 | 売上高(億円) | 売上総利益率(%) | 営業利益(億円) | 営業利益率(%) | 範囲 |
| 2024年3月期第1四半期(2023年4〜6月) | 347 | 25.9 | 7.6 | 2.2 | 食品を含む |
| 2024年3月期第2四半期(2023年7〜9月) | 353 | 25.8 | 10.4 | 2.9 | 食品を含む |
| 2024年3月期第3四半期(2023年10〜12月) | 390 | 24.8 | 13.6 | 3.5 | 食品を含む |
| 2024年3月期第4四半期(2024年1〜3月) | 367 | 22.6 | −5.6 | −1.5 | 食品を含む |
| 2025年3月期第1四半期(2024年4〜6月) | 359 | 26.1 | 13.1 | 3.6 | 食品を含む |
| 2025年3月期第2四半期(2024年7〜9月) | 380 | 25.4 | 17.0 | 4.5 | 食品を含む |
| 2025年3月期第3四半期(2024年10〜12月) | 357 | 29.1 | 36.6 | 10.3 | ITのみ |
| 2025年3月期第4四半期(2025年1〜3月) | 336 | 29.7 | 22.3 | 6.6 | ITのみ |
| 2026年3月期第1四半期(2025年4〜6月) | 314 | 29.2 | 29.7 | 9.5 | ITのみ |
| 2026年3月期第2四半期(2025年7〜9月) | 287 | 29.8 | 25.8 | 9.0 | ITのみ |
※日本基準・連結。第2〜4四半期は累計からの差し引き(当ブログの計算)。食品(シマダヤ)は2024年10月1日に切り離したため、2024年10〜12月以降はIT関連のみ。

図の上段は、2023年4〜6月から2025年7〜9月までの10四半期の売上高、下段は営業利益率の棒です。点線を境に、左が食品を含む期間、右が2024年10月からのIT関連のみの期間で、営業赤字だった2024年1〜3月(−1.5%)だけを赤で示し、底・山・最新に印を付けています。
右の枠は、2026年3月期の営業利益の予想が期初(2025年5月7日)の45億円から11月12日に77億円へ引き上げられたこと、中間期の営業利益55.5億円が修正後の予想の72.1%にあたること、逆算した下期の営業利益率が4.1%であること、そして会社が挙げた修正の理由です。
10四半期の底は、2024年1〜3月の営業損失5.6億円(営業利益率−1.5%)です。食品を切り離した直後の2024年10〜12月には36.6億円、営業利益率10.3%まで上がりました。最新の2025年7〜9月は、売上高287億円、営業利益25.8億円、営業利益率は9.0%です。
売上総利益率も、2024年1〜3月の22.6%から2025年7〜9月の29.8%まで上がりました。ただし食品の有無で事業の中身が違うため、食品を含む期間とそのまま比べることはできません。IT関連のみの4四半期では、29.1〜29.8%の範囲に収まっています。
売上高は、2024年10〜12月の357億円から336億円、314億円、287億円と、3四半期続けて前の四半期を下回りました。前年同期のIT関連セグメントの売上高(265億円)と比べると、2025年7〜9月は8.6%の増収です(当ブログの計算)。連結の前年同期(食品を含む380億円)と比べると24.4%の減収で、比べる相手によって向きが逆になります。
会社が挙げる利益の理由は、値上げ・想定より円高・原価低減で、メモリーの価格には触れていない
2025年11月12日の予想の修正について、会社は「主力とするパソコン周辺機器分野は、前期の値上げ効果が浸透したこと、想定為替より円高の水準に留まったこと、一部商品の原価低減活動が進捗したことにより収益が改善」と説明しています。
あわせて、卸売品ではRYZENなどのパソコン部品が堅調で、独占代理店の契約が2025年8月29日に終わったAirdogも上期には寄与したとしています。会社が挙げる利益の理由は、値上げ、為替、原価低減、卸売です。
当ブログが確認した2024年5月〜2025年11月の決算短信と予想の修正のお知らせには、メモリー・NAND・DRAM・SSDの価格や、半導体の調達についての記述がありませんでした。決算説明資料は確認できていないため、そちらに説明がある可能性は残ります。
為替については、会社の説明の向きがそろっています。2025年3月期第3四半期の決算短信では「長引く円安を主要因とする原価高騰により厳しい市況が継続」と書き、今期は想定より円高だったことを改善の理由に挙げました。会社の言葉を並べると、為替は原価の側で効くと読めます(当ブログの見方)。
そして2026年1月7日、会社は新たな価格改定を発表しました。1月20日から、外付けSSD53型番を24.3%〜171.5%、外付けHDD26型番を5.7%〜21.0%、ポータブルHDD36型番を4.9%〜17.8%、NAS40型番を0.7%〜24.1%値上げしました。一方で、Wi-Fiルーター4型番は10.0%〜14.6%の値下げです。
いずれも希望小売価格の改定で、お知らせに理由の記載はありません。実施が1月20日なので、2026年3月期では第4四半期(2026年1〜3月)にかかる改定です。外付けSSDの値上げ幅がいちばん大きいことは事実として読めますが、その理由を会社は示していません。
メモリーの市況そのものは、調査会社の予測では大きく動いています。TrendForceは2026年1月5日、2026年1〜3月のNANDの契約価格を前期比33〜38%の上昇と予測しました。ただし、バッファローの仕入れ値がどう動いたかは、会社の資料からは確かめられません。
サブリースの大家さんは、借り上げの賃料が上がっても、貸す家賃を改定できれば手取りを守れます。改定が遅れれば、差額はすぐに薄くなります。バッファローの決算で見るべきなのは、メモリーの相場そのものより、売上総利益率が保てているかだと私は考えます(当ブログの見方)。
用語メモ:希望小売価格=メーカーが示す参考の販売価格。契約価格=メモリーメーカーと大口の顧客が取り決める価格。TrendForce=台湾の調査会社。原価低減=製品を作ったり仕入れたりする費用を下げる取り組み。
2026年3月期の営業利益予想は45億円から77億円へ。下期は利益率4.1%が前提
| 公表日 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS(円) | 年間配当(円) |
| 2025年5月7日(期初) | 1,060 | 45.0 | 45.0 | 32.0 | 210.45 | 80 |
| 2025年8月8日 | 1,060 | 45.0 | 45.0 | 32.0 | 229.13 | 80 |
| 2025年11月12日 | 1,120 | 77.0 | 83.0 | 65.0 | 511.96 | 120 |
※2026年3月期の会社予想、億円。純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。2025年8月8日のEPSの変化は、自社株買いで減った株数で会社が計算し直したもの(利益の予想は同じ)。年間配当120円は中間60円・期末予想60円。
営業利益の予想は期初の45.0億円から77.0億円へ、71.1%の引き上げです。中間期の実績は売上高601億円、営業利益55.5億円で、修正後の予想に対する進捗は、売上高53.7%、営業利益72.1%、純利益71.0%でした。
裏返すと、予想から逆算した下期(2025年10月〜2026年3月)は、売上高519億円、営業利益21.5億円で、営業利益率は4.1%の前提です(当ブログの計算)。中間期の営業利益率9.2%(当ブログの計算)の半分以下にあたります。
下期の4.1%が慎重な置き方なのか、実際に利益率が下がる見込みなのかは、会社の資料からは読み取れません。前期の2025年3月期も、会社は2024年5月13日に営業利益58.0億円(スピンオフをしない前提)、8月26日に52.0億円(スピンオフ後の前提)、2025年2月12日に82.0億円と予想を動かし、実績は89.0億円でした。
2期続けて、期中に予想を引き上げた形です。ただ、過去の上振れは次の期を約束するものではありません。大家業でいえば、去年の満室が今年の満室を保証しないのと同じで、下期の数字は次の決算で確かめるしかないと私は考えます(当ブログの見方)。
配当の予想も、年80円から120円に引き上げられました(中間配当は予想の40円から60円に増額)。会社の配当方針は「連結配当性向30〜40%を目安」で、修正後の予想EPS511.96円に対する配当性向は23.4%です(当ブログの計算)。
用語メモ:EPS=1株あたり純利益。経常利益=営業利益に、受取利息や為替差損益などの営業外の損益を加えた利益(日本基準)。配当性向=1株配当÷1株あたり純利益。
在庫は売上原価の93日分、借入金を14.6億円新たに計上。ネットキャッシュは250億円
2025年9月30日の貸借対照表は、総資産709億円、純資産416億円、自己資本比率58.7%です。現金及び預金265億円に対して、借入金を14.6億円新たに計上しました(2025年3月末はゼロ)。差し引きのネットキャッシュは250億円です(当ブログの計算)。
棚卸資産は216億円(商品及び製品158億円、原材料及び貯蔵品58.0億円)で、中間期の売上原価で計算した在庫日数は93日です(当ブログの計算)。年度末の在庫日数は2022年3月期79日、2023年3月期77日、2024年3月期72日、2025年3月期71日でした。
ただし、年度の値は食品を含む売上原価で計算しており、半年の値とはそのまま比べられません。仕入れて置いてある商品は、大家業でいえば入居を待つ空室です。値上げの前後に在庫がどう動くかは、次の決算でも見ておきたい数字です(当ブログの見方)。
キャッシュ・フローを見ると、中間期の営業CFは19.9億円、投資CFは−1.9億円でした。財務CFは−69.3億円で、そのうち自社株買いが74.8億円、配当の支払が9.1億円です。前年の中間期の営業CFは−3.2億円、2025年3月期の1年間では147億円でした。
設備の負担は小さい会社だと読めます(当ブログの見方)。有形固定資産は2025年9月30日で7.2億円で、2024年3月期の有形固定資産の取得は20.5億円でした。2025年3月期の取得額は11.6億円で、営業CF147億円から引いたFCFは136億円です(当ブログの計算、食品の上期分を含む)。
大家業でいえば、借入がほとんどなく、手元の預金が厚い物件です。その預金の使い道が、いまは自社株買いに向いているのが、この会社の財務の特徴です。
用語メモ:在庫日数=期末の棚卸資産÷売上原価×365(中間期は×183日で年に直して計算)。営業CF=本業で得た現金。FCF=営業CFから有形固定資産の取得を引いたお金。ネットキャッシュ=現金から借入金を引いた額。
株主還元は配当性向30〜40%が目安。自社株買いで発行済株式数は約2割減った
1株配当は、2021年3月期の70円から2023年3月期以降は120円です。配当性向は、利益が落ち込んだ2023年3月期が66.2%、2024年3月期が66.8%で、2025年3月期は31.3%でした。
還元の中心は自社株買いです。2025年4〜6月に250万株を取得し、2025年6月19日の決議で消却しました。2025年8月8日には上限100万株・35億円の新しい枠(期間は2026年4月30日まで)を決め、9月5日にToSTNeT-3で65万株を1株3,500円で取得しています。
この65万株は2025年10月31日に消却され、発行済株式数は1,215万株(12,150,000株)になりました。2025年3月31日の1,530万株から約2割(20.6%)減った計算です(当ブログの計算)。枠の中の取得は、2025年11月30日までの累計で77.4万株・28.8億円です。
お金で見ると、2025年3月期の配当の支払は19.1億円、自社株買いは52.5億円で、合わせて71.6億円。2026年3月期は中間期だけで、配当9.1億円と自社株買い74.8億円の計83.9億円と、前の1年分を上回りました。
大家業でいえば、自社株買いは共有持分の買い戻しです。共有者が減れば、残った人の持分は自然に大きくなります。1株あたりの利益が伸びやすくなる一方で、使った現金は戻ってきません。
株の持ち手の面では、筆頭株主のメルコグループが、同じ2025年9月5日にToSTNeT-3で55.5万株を3,500円で売却し、保有割合は前回報告の32.62%から28.28%になりました。変更報告書によると、保有株のうち349万株は銀行6行に担保として差し入れられています。
用語メモ:ToSTNeT-3=東証の自己株式立会外買付取引。取引時間外に自己株式を買い付ける仕組みで、今回の価格は前日の終値。消却=取得した自己株式をなくして発行済株式数を減らすこと。
2026年1月30日の株価で見ると、予想PER8.8倍、PBR1.30倍
| 指標 | 値 | 前提 |
| 株価(終値) | 4,490円 | 2026年1月30日(株価データサイトの値をもとに当ブログが復元した値、二次資料) |
| 時価総額 | 537億円 | 自己株式を除く株数11,969,612株(2025年11月30日時点の当ブログの推計)。発行済株式数12,150,000株なら546億円 |
| 予想PER | 8.8倍 | 2026年3月期の会社予想EPS 511.96円(2025年11月12日) |
| 実績PER | 7.4倍 | 直近4四半期(2024年10月〜2025年9月)のEPS 610.28円(近似) |
| 益回り | 予想11.40%/実績13.59% | 1÷PER |
| PBR | 1.30倍 | 1株あたり純資産3,441円(純資産÷自己株式を除く株数、2025年9月30日、当ブログの計算) |
| EPS÷BPS | 実績17.7%/予想14.9% | PBR÷PERと同じ。2025年3月期のROEは11.0%(会社の表示) |
| 配当利回り | 2.67% | 年120円の予想 |
| 株主還元利回り | 13.32% | 2025年3月期の配当の支払19.1億円+自社株買い52.5億円 |
| ネットキャッシュ÷時価総額 | 46.61% | 現金及び預金265億円−借入金14.6億円(2025年9月30日) |
| 2025年の騰落率 | +118.8% | 2024年12月30日2,218円→2025年12月30日4,854円 |
| 2026年1月の騰落率 | −7.5% | 2025年12月30日→2026年1月30日 |
※当ブログの計算。株価は二次資料をもとに当ブログが復元した終値で、1円程度の誤差がありうる。時価総額の株数は、2025年10月31日の消却後の株数から11月30日時点の自己株式を推計して差し引いたもので、12月以降の自社株買いは反映していない。FCF利回りは、2025年3月期のFCF136億円(営業CF−有形固定資産の取得、食品の上期分を含む)で計算すると25.25%。
会社予想で計算した予想PERは8.8倍で、逆さにした益回りは11.40%です。大家業でいえば、手取りベースの利回りが11%台の物件として値段が付いている形です。ただしその分母は、下期の営業利益率4.1%という会社の前提を含んだ予想の利益です。
実績PERは7.4倍ですが、これは株数が減る途中の期間の1株あたり利益を足し合わせた近似値です。今の株数でそろえた時価総額を直近4四半期の純利益で割ると6.2倍、2025年3月期の実績EPSで割ると11.7倍になります。どの期間の利益で割るかで、物差しの目盛りが変わります。
PBRは1.30倍で、1株あたり純資産は3,441円です(当ブログの計算)。純資産を自己株式を除く株数で割って求めた値で、中間期の決算短信が示す1株あたり純資産3,441.15円とほぼ同じです。
時価総額537億円に対して、ネットキャッシュは250億円で、46.61%にあたります。株主還元利回り13.32%は、2025年3月期の配当と自社株買いの実額で計算した値です。
用語メモ:PER=株価収益率。株価÷1株あたり純利益。益回り=PERの逆数。PBR=株価純資産倍率。株価÷1株あたり純資産(BPS)。ROE=自己資本利益率。株主還元利回り=最新通期の配当の支払と自社株買いの合計÷時価総額。
株式投資の目線では、バッファロー株は「値上げの浸透と、厚い還元」に賭ける株
ここからは、決算の数字を株式投資の銘柄選びにつなげます。バッファローは、メモリーを作る側ではなく、買って製品にする側です。私はこの株を、値上げが利益率として残るかと、手元資金を使った還元が続くかに賭ける株だと見ています(当ブログの見方)。
株価と利益の向きを見ると、2025年の株価は2,218円から4,854円へ118.8%上がり、2026年1月は7.5%下がりました。同じ1月にキオクシアは104.7%上がっており、同じメモリーにかかわる株でも向きは逆でした。
利益の側では、会社予想の2026年3月期の純利益65.0億円は、食品を含む2025年3月期の60.1億円より8.2%多い水準です。ところが1株あたりでは、383.99円から511.96円へ33.3%増えます(いずれも当ブログの計算)。株数が減ったぶん、1株あたりの伸びが大きく出る形です。株価の騰落率は暦年、決算は3月期で、期間がずれる点に注意が要ります。
今の株価が前提にしていることを倍率で見ると、予想PER8.8倍・益回り11.40%です。キオクシアは実績PER73.0倍、会社予想×4(翌四半期のEPSの会社予想の中央値の4倍)で38.9倍、海外のメモリー大手7社の実績PERの中央値は31.9倍(4社)です。ただし作る側の会社と買う側の会社は、利益の振れ方が違うため、同じ物差しで並べるのは参考までです。
バッファローは通期の予想を出しており、翌四半期だけを予想するキオクシアとは、物差しの分母の長さも違います。その通期予想の下期は、先に見たとおり営業利益率4.1%の前提です。
銘柄選びでは、下期の利益率4.1%という会社の前提と、還元の続き方を確かめたい
PBRは1.30倍で、キオクシアの14.07倍、海外7社の中央値5.94倍を下回ります。PBRをPERで割った実績のEPS÷BPSは17.7%で、2025年3月期のROE11.0%を上回ります。今の利益の水準が続くなら資本の効率は高く、続かなければ前期のROEの水準に近づく、という読み方になります(当ブログの見方)。
お金の面では、株主還元利回り13.32%は、キオクシアの0.00%、海外7社の中央値0.00%とはまるで違う水準です。ネットキャッシュは時価総額の46.61%(海外7社の中央値1.10%)。大家業でいえば、物件の値段の半分近くを金庫の現金が占めているような形です(当ブログの見方)。
利益の振れは小さめです。年次の営業利益率の振れ幅は7.0ポイントで、キオクシアの49.9ポイント、海外7社の中央値37.0ポイントを大きく下回ります。それでも四半期では、2024年1〜3月に営業損失を出しており、振れが小さいことと赤字にならないことは別です。
株価が動くきっかけは、まず会社予想の修正です。この2期は、期中に引き上げる形が続きました。次に製品の価格改定と為替で、会社は想定より円高だったことを利益の改善の理由に挙げています。自社株買いの枠は2026年4月30日までで、残りは最大22.6万株です(2025年11月30日時点)。
下振れのリスクは、主に四つあると考えます。一つ目は下期の利益率で、会社予想は4.1%を前提にしています。二つ目は為替で、会社は円安を原価高騰の主な要因として挙げてきました。三つ目は仕入れで、会社はかつて半導体を中心とした部材の調達難を挙げており、今の仕入れの状況は資料からは確かめられません。
四つ目は売上の中身です。卸売品は売上の26.2%を占め、他社の製品の売れ行きに左右されやすい分野だと私は見ています。Airdogの独占代理店の契約も2025年8月29日に終わりました。筆頭株主の保有株が担保に入っていることも、株の需給の面で確かめておきたい点です(当ブログの見方)。
| 銘柄選びで確かめる点 | この会社の数字(時点) | 当ブログの見方 |
| この株の性格 | メモリ・ストレージ機器が売上の30.4%、卸売品が26.2%(2025年4〜9月) | メモリーを作る側ではなく、買って売る側 |
| 株価と利益の向き | 2025年の株価+118.8%、2026年1月−7.5%/営業利益の予想45億円→77億円(2025年11月12日) | 予想の引き上げと株価の上昇の向きはそろう。1月はキオクシアと逆 |
| 利益に対する株価の水準 | 予想PER8.8倍・益回り11.40%、実績PER7.4倍(2026年1月30日) | 分母の予想は、下期の営業利益率4.1%が前提 |
| PBRと資本の効率 | PBR1.30倍、実績EPS÷BPS17.7%、ROE11.0%(2025年3月期) | 今の利益の水準が続くかで、意味が変わる |
| 株主に戻すお金 | 配当利回り2.67%、株主還元利回り13.32%(2025年3月期の実額)、ネットキャッシュ÷時価総額46.61% | 還元の中心は自社株買いで、株数は約2割減った |
| 景気の波への強さ | 年次の営業利益率の振れ幅7.0ポイント(キオクシア49.9ポイント)、四半期の底−1.5%(2024年1〜3月) | 振れは小さいが、営業損失の四半期もあった |
この性格が合うかどうかは、投資の目的で分かれます。配当と自社株買いを合わせた還元を重視する人には、株主還元利回り13.32%という数字がまず目に留まるはずです。ただし還元の中心は自社株買いで、続くかどうかは枠の決議しだいです。
株価は2025年に2倍を超えており、値動きの大きさも小さくはありません。値上げの効果が下期以降も利益率に残るかを、四半期ごとに確かめ続けられるかが、この株を選ぶかどうかの分かれ目になると思います(当ブログの見方)。
バッファローは東証スタンダード市場と名証に上場する日本株です。日本株の配当には、総合課税を選んだときの配当控除という仕組みがあります。配当や売却益の税金、NISAでの扱いは、キオクシアと海外大手を比べて日本株の税金を整理する回で取り上げます。
バッファローの決算は、「仕入れ値」を語らない会社の数字を、売上総利益率と会社の言葉から読む
バッファローは、メモリーを買ってSSDやルーターにして売る会社です。2026年3月期は営業利益の予想を77億円へ引き上げ、会社はその理由を、値上げの浸透、想定より円高、原価低減と説明しました。決算短信と予想の修正のお知らせに、メモリーの価格の話は出てきません。
次の決算で確かめたいのは、まず2025年10〜12月の営業利益率です。下期の会社予想の4.1%に対して、どこに着地するか。次に、1月20日の値上げが2026年1〜3月の売上と売上総利益率にどう表れるか、そして在庫日数の93日がどう動くかです。
あわせて、自社株買いの枠の残りがどう使われるか、借入金がさらに増えるか、会社が為替と仕入れについてどう語るかも見ておきたい点です。
大家業を長く続けていると、相場の話より、自分の物件の家賃と経費の差がどう動いたかのほうが、ずっと正直に経営の姿を語ると感じます。バッファローの決算も同じで、メモリーの相場を推測で重ねるより、会社の言葉と売上総利益率を一つずつ確かめるほうが、数字の意味がはっきり見えてくるはずです。
メモリーを作る側のキオクシアの決算・財務・株価を読む回、日本のメモリー産業の地図を描く回、そしてキオクシアと海外大手を比べて日本株の配当の税金を整理する回もあわせてどうぞ。
※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。業績や株価に関する記述は当ブログの見方や試算で、将来の業績や株価を予想・保証するものではありません。
※数値は各社の決算短信・決算説明資料・有価証券報告書などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。海外企業の円換算は2026年1月30日の為替レートによる参考値です。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。
出典・参考
- 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(バッファロー、2025年11月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120251110594451.pdf
- 通期連結業績予想の修正並びに剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ(バッファロー、2025年11月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120251110594442.pdf
- 2026年3月期 第1四半期 決算短信(バッファロー、2025年8月8日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120250729522564.pdf
- 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(バッファロー、2025年5月7日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120250502530708.pdf
- 2025年3月期 第3四半期 決算短信(メルコホールディングス、2025年2月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120250206565138.pdf
- 通期連結業績予想の修正に関するお知らせ(メルコホールディングス、2025年2月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120250210568774.pdf
- 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(メルコホールディングス、2024年11月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120241108516735.pdf
- 2025年3月期 第1四半期 決算短信(メルコホールディングス、2024年8月9日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120240807565593.pdf
- 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(メルコホールディングス、2024年5月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120240509585480.pdf
- 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(メルコホールディングス、2023年5月12日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120230508559922.pdf
- 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(メルコホールディングス、2022年5月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120220426528262.pdf
- 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ(バッファロー、2025年9月4日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120250904553120.pdf
- 自己株式の消却に関するお知らせ(バッファロー、2025年10月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120251014572839.pdf
- 自己株式取得状況に関するお知らせ(2025年11月分)(バッファロー、2025年12月1日)https://www2.jpx.co.jp/disc/66760/140120251201512410.pdf
- 変更報告書51(株式会社メルコグループ、対象:バッファロー)(EDINET、2025年9月9日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100WNEQ.pdf
- 商品価格改定のお知らせ(バッファロー、2026年1月7日)https://www.buffalo.jp/press/detail/20260107-04.html
- 【お詫びと訂正】2024年3月1日「商品価格改定のお知らせ」について(バッファロー、2024年3月21日)https://www.buffalo.jp/press/detail/20240321-03.html
- 上場廃止等の決定:アイ・オー・データ機器(東京証券取引所、2022年5月30日)https://www.jpx.co.jp/news/1023/20220530-11.html
- Memory Makers Prioritize Server Applications, Driving Across-the-Board Price Increases in 1Q26(TrendForce、2026年1月5日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260105-12860.html
- 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)(キオクシアホールディングス、2025年11月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/285A0/140120251113599856.pdf
- 株価:株探 バッファロー(6676)時系列(月足) https://s.kabutan.jp/stocks/6676/historical_prices/monthly/
- 株価:Yahoo!ファイナンス キオクシアHD(285A)時系列 https://finance.yahoo.co.jp/quote/285A.T/history































