東雲結子:先生、書き初めです! 今年は思い切って、「希薄化」の三文字に挑戦します。

税理士石井:また渋い字を選びましたね。……あれ、筆が止まっていますよ。

東雲結子:「薄」の画数が多すぎて、途中で墨が足りなくなったんです。水を足して書いたら、字がどんどんかすれてきました。

税理士石井:ははは、書いているそばから、字そのものが希薄化していますね。

東雲結子:……先生、うまいこと言っていないで、墨をください。

税理士石井:では墨の代わりに、話を一つ。リミックスポイントは2025年10月23日に、「ビットコインなどの暗号資産を購入する目的で新株予約権を含む株式を発行しない」と決議しました。2026年6月の定時株主総会まで、今の経営体制が続く場合、という条件付きです。

東雲結子:「希薄化」を書くのを、いったんやめたんですね。それまでは書いていたんですか?

税理士石井:ええ。2025年3月末から10月末までに株数は約19%増えましたが、1,000株あたりのビットコインは約92%増えました。水で薄めた以上に、墨の粉を足した形です。大家さんでいえば、1口あたりの物件の値打ちより高い値段で新しい共有者に入ってもらい、そのお金で物件を買い足したようなものです。

東雲結子:薄めたのに、かえって濃くなった書き初め……。それなら私の半紙も、まだ救えるかもしれません!

税理士石井:ふふ、半紙の救出は後にしましょう。今回は、リミックスポイントが持つ約1,411BTCの中身とお金の出どころ、そして墨を足さなくなった会社の株価がビットコインの値段しだいでどこまで動くのかを、当ブログの試算で見ていきます。

連載の第6回は、リミックスポイント(3825、東証スタンダード、3月決算)のビットコインと株価です。リミックスポイントのビットコインは、2025年10月31日時点で1,411.29831101BTC。その後2025年12月31日まで、購入や売却の開示はありません。12月31日の終値87,508.83ドルを1ドル156.56円で換算すると約193.4億円で、2025年12月30日の時価総額約369.4億円(終値252円)の約52%にあたります(当ブログの計算)。ほかにイーサリアム、ソラナ、XRP、ドージコインも持っています。

2025年は、ビットコインの持ち方が大きく変わった1年でした。分散投資から始まった暗号資産の購入は2025年2月上旬からビットコインだけに絞られ、6月には「累計1,000BTC以上」の目標に届きます。それを後押ししたのが、EVO FUNDを割当先とする新株予約権と社債でした。ところが夏以降、会社は第25回新株予約権の大半を買い戻して消却し、10月23日には暗号資産を買うための株式の発行をしないと決議します。

今回は、購入の経緯と銘柄別の保有、取得原価と年末の含み損(当ブログの計算)、資金調達と希薄化、10月23日の決議を確かめ、当ブログのmNAV(会社の値段が保有ビットコインの価値の何倍か)を計算したうえで、ビットコインの4つの水準で株価の幅を試算します。損益計算書や貸借対照表は、リミックスポイントの決算書を読む回で詳しく見ます。

「キャッシュ・マネジメント」の分散投資から、ビットコインへの集中へ

最初の購入を決めた2024年9月26日、会社は暗号資産の購入を「キャッシュ・マネジメント戦略の一環」と位置づけ、「余剰資金の一部」で買うと説明しました。中身はビットコイン(BTC)12億円と、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、アバランチ(AVAX)各1億円の計15億円。取締役会はその後も購入の枠を足していきます。

決議日 枠 累計 中身
2024年9月26日 15億円 15億円 BTC 12億円、ETH・SOL・AVAX 各1億円
2024年11月14日 10億円 25億円 BTC 8億円、SOL 1.5億円、ETH 0.5億円(金融投資事業の開始と同じ日)
2024年11月20日 5億円 30億円 XRP・DOGE(各1億円以内)と残りをBTC
2024年11月25日 5億円 35億円 BTC
2024年11月28日 15億円 50億円 市場の状況に応じて銘柄を選ぶ
2025年1月9日 30億円 80億円 同上
2025年1月30日 20億円 100億円 同上(2月28日までに使い切り)
2025年4月24日 10億円 110億円 金融投資事業の一環
2025年5月26日 10億円 120億円 BTC(第24回新株予約権の資金による購入とは別)

 

※会社の適時開示による。このほか、第24回新株予約権の資金のうち44.02億円、第25回新株予約権の資金のうち295.27億円をビットコインの購入にあてる計画が示された(第25回は大半が調達されずに終わった)。

方針は途中で何度か変わっています。2024年10月31日には、イーサリアムとアバランチの一部を売ってビットコインとソラナを増やす入れ替えを決め、11月20日にはXRPとドージコインを加えました。2025年1月にはアバランチを全部売り、イーサリアムも1,391.32ETHから901.45ETHへ減らしています(売却額が開示されたのは1月17日の288.46ETH・1.5億円だけ)。そして2月3日のXRPの購入を最後に、買うのはビットコインだけになりました。

大家業にたとえると、最初は区分マンション、店舗、駐車場と小口に分けて買っていたのを、途中から一棟もの一本に絞った、という変化です。分散を捨てて集中を選んだ分、ビットコインの値動きが会社の数字にそのまま響く形になりました(当ブログの見方)。

銘柄別の保有の推移:2025年2月3日のXRPを最後に、買うのはビットコインだけに

図の上段は、会社が開示した各時点の保有ビットコインの枚数です。2024年9月末の64.40BTCから、12月末299.84BTC、2025年3月末616.00BTC、6月末1,051.56BTC、9月末1,350.27BTC、10月31日1,411.30BTCと増えました。緑の点線は、会社が2025年6月5日に公表した「累計1,000BTC以上」(期限なし)の目標です。下段は、ビットコイン以外の暗号資産の評価額(各時点の時価、百万円)を銘柄ごとに積み上げたもので、2024年12月末の1,292.7百万円から、2025年3月末954.0百万円、9月末1,574.7百万円と動いており、3月末以降は数量が変わらないまま、価格だけで上下しています。10月31日は評価額の開示がなく、数量は9月末と同じです。

銘柄 2024年9月30日 2024年12月31日 2025年1月31日 2025年3月31日以降
ビットコイン(BTC) 64.40 299.84 509.33 616.00→1,411.30(10月31日)
イーサリアム(ETH) 130.10 1,391.32 901.45 901.45
ソラナ(SOL) 2,260.50 6,724.52 13,920.07 13,920.07
XRP ― 513,060.56 905,490.51 1,191,204.80
ドージコイン(DOGE) ― 1,151,602.19 2,802,312.00 2,802,312.00
アバランチ(AVAX) 12,269.94 19,468.92 ― ―

※数量。会社の適時開示・決算短信・決算補足説明資料による。2025年3月31日以降、ビットコイン以外の数量は変わっていない(10月31日まで)。

2025年9月30日の時価で見ると、暗号資産全体242.73億円のうちビットコインが226.98億円、約93.5%を占めます(当ブログの計算)。年末の換算でも、ビットコイン193.4億円に対してほかの4銘柄は14.4億円です(ソラナ・XRP・ドージコインは9月30日の帳簿価額)。リミックスポイントの暗号資産は、ほぼビットコインと言ってよいでしょう。

累計1,000BTCの目標は6月に達成、年末の換算値では取得原価を9.5%下回る

2025年6月5日、会社は「今後、累計1,000BTC以上のビットコインの取得を目指してまいります」と公表しました。このときの保有は約680BTC。1週間後の6月12日の購入で1,038.27BTCに達しています。8月14日には「国内No.1のビットコイントレジャリー企業」を目指すとも書いていますが、数字の目標はありません。

では、買ったビットコインは年末の価格でどうなっているのか。購入の開示に書かれた取得原価と、年末の換算値で比べます。

銘柄 取得原価 年末の評価額 差(含み損益) 評価額の基準
ビットコイン 21,370 19,335 −2,035(−9.5%) 12月31日の終値の換算
イーサリアム 552 419 −133 12月31日の終値2,967.04ドルの換算
ソラナ 435 428 −7 9月30日の帳簿価額(時価)
XRP 425 500 +75 9月30日の帳簿価額(時価)
ドージコイン 170 95 −75 9月30日の帳簿価額(時価)

※百万円。当ブログの計算。ソラナ・XRP・ドージコインは年末の価格が手元にないため9月30日の帳簿価額で置いており、評価の時点がそろっていない。

ビットコインの取得原価は213.7億円、1BTCあたりの平均は15,142,086円(1ドル156.56円で換算すると約96,717ドル)です。年末の換算値13,700,382円で評価すると約193.4億円で、含み損は約20.35億円(−9.5%)、1BTCあたり約144万円になります(当ブログの計算)。

とくに重いのは2025年に買った分です。2024年12月31日の299.84BTC(取得原価37.18億円)から10月31日までに、約1,111BTCを約176.5億円で買い増しており、平均は1BTCあたり約1,588万円。年末の換算値はこれを13.7%下回ります(当ブログの計算)。大家業でいえば、早めに買った物件より、相場の高いところで買い増した物件のほうが評価割れしている状態です。

用語メモ:取得原価と簿価=リミックスポイントの資料には二つの「原価」が出てきます。購入の開示の累計である取得原価と、決算の補足資料の簿価(2025年3月31日の時価に、その後の取得額を足したもの)です。9月30日のビットコインは、簿価で195.71億円、取得原価では9月17日時点の開示で203億円でした。この記事の含み損は取得原価で計算しています。

なお、これは当ブログの換算値での差で、会社が決算で計上する評価損益とは一致しません。会社の評価損益は期ごとの帳簿価額との差で、会社が使う価格・時点で決まります。2025年10〜12月期の決算は2026年の公表です。

EVO FUNDの新株予約権と社債で、6〜10月の買い増しを加速

取締役会の購入枠(自己資金)が120億円まで積み上がる一方で、2025年5月からは外部の資金が加わります。割当先はいずれもEVO FUND(ケイマン諸島のファンド)です。

第24回新株予約権 第25回新株予約権 第4回無担保社債(私募債)
発表・発行 2025年5月19日発表、6月4日割当 2025年7月9日発表、7月25日割当 2025年7月9日発表、7月11日発行
規模 125,000個(1,250万株) 550,000個(5,500万株) 20億円(利率0%)
新株予約権の発行価額 1個29円 1個48円 ―
当初の行使価額/下限 450円/215円 575円/342円 ―
行使価額の修正 3取引日ごとに、前取引日の終値の100%へ 3取引日ごとに、直前3取引日の終値平均の100%へ ―
期間・満期 2025年6月5日〜2026年6月5日 2025年7月28日〜2026年7月28日 2026年7月28日
予定した手取り 約56.0億円(BTC 44.02億円、Web3.0事業12億円) 約315.3億円(社債の償還20億円、BTC 295.27億円) ―
結果 6月12日までに全部行使、59.80億円(平均478円) 110,700個(1,107万株)が行使、残りは取得・消却 8月13日までに繰上償還

※会社の適時開示・半期報告書による。第24回の資金使途は2025年12月1日に変更され、Web3.0事業の12億円が蓄電池・エネルギー事業の12.70億円に置き換わった(ビットコインの購入は実績で47.06億円)。

用語メモ:行使価額修正条項付新株予約権(MSワラント)=決まった値段(行使価額)で新株を受け取れる権利のうち、行使価額が株価に合わせて定期的に修正されるもの。行使するかどうか、いつ行使するかは持ち主が決めます。行使のたびに新株が発行されて既存株主の持分は薄まり、行使価額は下限行使価額より下には修正されません。大家業でいえば「その時々の相場で値段が変わる出資の約束」です。

第24回は6月5日から行使が始まり、6月12日までの1週間あまりで全部が行使されました。この間、会社は6月4日から13日にかけて毎日のようにビットコインを買い、保有は一気に1,000BTCを超えます。第4回社債の20億円は、発行した7月11日にそのまま116.72BTCの購入にあてられ、第25回の行使で入ったお金で8月13日までに繰上償還されました。

第25回は、9月30日までに94,500個(945万株、平均449円)が行使されて42.51億円が入り、10月にも16,200個(162万株、342〜348円)が行使されています。会社は9月30日までの累計として、EVO FUNDを割当先とする新株予約権と私募債で総額102億円を調達し、うち88億円をビットコインの取得にあてたと説明しています。

株数は約19%増、1,000株あたりのビットコインは約92%増

新株予約権の行使で増えた株は、第24回と第25回で合計2,357万株です。株数と1,000株あたりのビットコインを並べてみます。

時点 発行済株式数 自己株式を除く株数 保有BTC 1,000株あたりBTC
2024年3月31日 122,727,800 120,292,800 ― ―
2025年3月31日 125,350,800 122,915,800 616.00 0.00501
2025年6月(株数は6月12日、BTCは6月30日) 137,910,800 135,475,800 1,051.56 0.00776
2025年10月31日 149,039,800 146,604,800 1,411.30 0.00963

※自己株式は各時点とも2,435,000株。1,000株あたりBTCは自己株式を除く株数で当ブログが計算。暗号資産の購入は2024年9月から。

自己株式を除く株数は、2025年3月31日から10月31日までに19.3%増えました。一方で保有BTCは約795BTC増え、1,000株あたりのビットコインは0.00501BTCから0.00963BTCへ92%増えています(当ブログの計算)。株を増やしても1株あたりのビットコインが増えたのは、手元資金での購入に加えて、新株が1株あたりのビットコインの時価を大きく上回る値段で発行され、その資金でビットコインを買ったからです。会社が示した6月30日のmNAVが4.8倍だったように、この時期の株価は保有ビットコインの価値を大きく上回っていました。

会社も独自の指標を開示しています。6月30日の1,000株あたりBTCは0.007624943BTC(当ブログの検算では、自己株式を含む137,910,800株で割った値と一致)、2025年4〜6月の「BTCイールド」は55%、2024年9月25日から2025年6月30日までの時価総額の増加は240%です。いずれも会社定義の指標で、株数の数え方が当ブログの計算とは違います。

用語メモ:BTCイールド=会社の説明では「1株の中に入っているBTCが何%増加したかを表す指標」。会社が独自に定義した指標で、会計の数字ではありません。

第25回は約8割を、発行価額と同じ1個48円で買い戻して消却した

流れが変わったのは8月です。会社は8月19日、第25回の半分にあたる275,000個を9月4日に1,320万円で取得すると決め(10月9日に消却)、理由を「資本政策の柔軟性を確保するとともに、株主への影響にも配慮し」と説明しました。さらに10月9日、残りをすべて10月31日に取得・消却すると決議し(実際は164,300個、788万6,400円)、「株主の皆様における株式の希薄化懸念を早期に解消することが、当社の喫緊の課題」と書いています。

結果として、第25回の550,000個のうち行使されたのは110,700個(約20.1%)で、439,300個(約79.9%)は取得・消却されました(当ブログの計算)。取得の金額を個数で割ると、どちらも1個48円で、発行価額と同じです。予定していたビットコインの購入資金295.27億円の大半は、調達されないまま終わりました。

株価も確認しておきます。月末の終値は7月489円、8月394円、9月337円、10月317円と下がり、9月末には第25回の下限行使価額342円を下回っていました。株価が下限を下回ると行使価額は下限で止まるので、持ち主は市場で買うより高い値段で株を受け取ることになり、行使は進みにくくなります(当ブログの見方)。

この間の9月30日には代表取締役社長CEOが田代卓氏から高橋由彦氏に代わり、同じ日にSBI VCトレードと連携して、ビットコインの取引・保管・運用を始めると発表しています。

2025年10月23日の決議:暗号資産を買うための株式は発行しない

そして10月23日、会社は「ビットコインなどの暗号資産を購入する目的で新株予約権を含む株式を発行しないことを決議しました」と公表しました。期間は2026年6月の定時株主総会までで、現在の経営体制が続く場合という条件付きです。あわせて、「当社株式の希薄化を伴わない方法で検討又は模索してまいります」としています。

文言を読むと、この決議には三つの限定があります。対象は「暗号資産を購入する目的」の株式発行であること、期限が2026年6月の定時株主総会までであること、そして現在の経営体制が続く場合であること。2026年6月以降の方針は、この決議からは分かりません。

決議の後も、会社は10月31日に5億円で29.46BTCを買い足しましたが(11月4日に開示)、その後12月31日までは購入の開示がありません。12月9日に公表した中期経営計画はエネルギーと蓄電の2事業の目標だけで、ビットコインの目標は入っていません。8月に検討を始めた持株会社体制への移行(エネルギーと蓄電を子会社に移し、ビットコインは持株会社に残す案)は、11月14日に予定を2026年4月1日へ変えています。

潜在的な株も確認しておきます。有償ストック・オプションの第23回が1,565,000株(行使価額331円)、第27回が50,000株(同310円)で、合わせて自己株式を除く株数の約1.1%です(当ブログの計算。ほかのシリーズの条件は確認できていません)。第24回・第25回の新株予約権は、10月31日時点で残っていません。

大家業でいえば、新しい共有者を募って物件を買い足すのを、少なくとも次の総会まではやめると宣言した状態です。ここから先の買い増しは、手元の現金や本業の稼ぎ、あるいは株を増やさない別の方法に頼ることになります(当ブログの見方)。

リミックスポイントのmNAVは当ブログの計算で1.75倍。会社の4.8倍とは時点も物差しも違う

ここで、株価がビットコインの価値に対してどれだけ上乗せされているかを測ります。

項目 金額 中身
時価総額 369.4億円 252円×146,604,800株(10月31日の発行済株式数から自己株式を除く)
+短期借入金 2.0億円 9月30日
−現金及び預金 32.1億円 9月30日
=EV(企業価値) 339.3億円
保有BTCの時価 193.4億円 1,411.30BTC×13,700,382円(換算)
mNAV(EV÷保有BTCの時価) 1.75倍 当ブログの計算
参考:時価総額÷保有BTCの時価 1.91倍
参考:EV÷暗号資産全体の時価 1.63倍 ほかの4銘柄14.4億円を含む

※当ブログの計算。現金は9月30日の残高で、10月の暗号資産の購入(10.7億円)や新株予約権の行使による入金は反映していない。現金から10月の購入額を差し引くと1.81倍。

用語メモ:mNAV(エムナブ)=会社の値段が、持っているビットコインの価値の何倍かを示す指標。当ブログは、EV(時価総額に借入を足し、現金を引いた「会社を借入ごと買う値段」)を保有ビットコインの時価で割って計算しています。物件でいえば、物件の評価額に対して、持分にどれだけ上乗せした値段がついているかです。

会社が示したmNAVは、2025年6月30日時点で4.8倍でした。会社はmNAVを「BTCのNAVに対する企業価値を表す倍数」とし、「当社のmNAVは既存事業のNAVも含む」と断っています。当ブログの1.75倍も、分子のEVには電力などの本業の価値が入ったままで、その点は同じです。違うのはまず時点(6月30日と12月30日)で、会社の計算の細かい中身(株数や現金の扱い)は開示されていません。6月30日の月末終値544円に対し、12月30日は252円と53.7%下がっていますから(当ブログの計算)、同じ物差しでも数字が大きく縮むのは自然です。

本業の分をざっと外してみます。暗号資産(ビットコインとほかの4銘柄)に現金を足し、借入を引いた株式価値は237.9億円、1株あたり162円。さらに本業の簿価49.93億円(9月30日の、暗号資産・現金・借入金以外の純資産)を足すと287.8億円、1株あたり196円です。時価総額369.4億円は、これを約81.6億円上回っていました(当ブログの計算)。EVから本業の簿価を引き、暗号資産全体で割った参考値は1.39倍です。

1株あたりで見ると、株価252円に対し、1株が持つビットコインは963sats(サッツ。1sat=1億分の1BTC)、年末の換算で131.9円分でした。ここに一つ、考えさせられる点があります。株価が1株あたりのビットコインの時価を上回っている以上、計算の上では、12月30日の株価でも新株を売ってビットコインを買えば1株あたりのビットコインは増える水準でした。それでも会社は、株主の希薄化への懸念を優先した形です(当ブログの見方)。

ビットコインの周期の中で見ると、買い始めは今回の周期の後半だった

リミックスポイントが暗号資産を買い始めた2024年9月は、2024年4月20日の半減期から5か月ほど後でした。ビットコインはその後、半減期から534日後の2025年10月6日に終値の最高値124,752.53ドルをつけ、12月31日は高値から−29.85%です。平均取得単価の約96,717ドル(換算)は、この最高値と年末の終値87,508.83ドルの間にあります。

過去3回の周期では、山から1年ほど(364〜406日)で−76.63〜−84.53%の谷をつけました(終値ベース)。今回も同じ形をなぞるのか、2025年10月の高値が天井だったのかは、2025年末の時点では分かりません。周期は過去3回の記述統計で、法則ではありません。

株価の動きはどうか。2025年の月ごとの騰落率で、ビットコイン(ドル建て)に対するリミックスポイントのベータは1.91、相関は0.49でした(12か月の記述統計で、予測ではありません)。ただし1月は、ビットコインの+9.6%に対して株価が+116.5%と飛び抜けており、1月を除いて計算するとベータは約1.0です(当ブログの計算)。年間の終値の高値は2月13日の806円で、ビットコインの高値より8か月近く早く、その後は上下しながら12月8日に終値の安値232円をつけています。

用語メモ:ベータ=ビットコインが1%動いたとき、株価が平均して何%動いたかを示す値。相関=動く向きがどれだけそろっているか(1に近いほど連動)。

前回の周期では、リミックスポイントの株価は2021年に+378.9%、2022年に−12.4%でした。ただ当時は交換業者ビットポイントジャパンの親会社で、2022年はその過半を売った年です。事業の中身が今と違うので、当ブログではこの値動きをシナリオの参考値には使いません。

リミックスポイントの株価のシナリオ:ビットコインの4つの水準で試算する

では、2026年末にビットコインがどこにいれば、株価はどのくらいになりうるのか。米国の仮想通貨関連株の連載と同じ4つの水準で試算します。以下はすべて当ブログの試算で、株価の予想ではありません。

シナリオ 2026年末のBTC 12月31日比 1BTCの円換算 置いた前提
S1 過去3回の周期をなぞる 23,053ドル(幅19,301〜29,149ドル) −73.7% 361万円 2025年の終値高値124,752.53ドル×(1−過去3回の平均下落率81.52%)。幅は過去3回で最大の84.53%と最小の76.63%で計算
S2 下げが過去より浅い 62,376ドル −28.7% 977万円 2025年の終値高値の半値
S3 横ばい 87,509ドル 0.0% 1,370万円 2025年12月31日の終値と同じ
S4 2025年の高値を回復 124,753ドル +42.6% 1,953万円 2025年の終値高値

※円換算は1ドル156.56円で固定。円高になれば円建ての結果は下がり、円安になれば上がる。

主に使うのは、保有資産から計算するNAV方式です。株式価値=1,411.30BTC×シナリオのBTC価格+ほかの4銘柄(年末の評価14.4億円をBTCと同じ率で増減)+現金及び預金32.11億円−短期借入金2.00億円(いずれも9月30日)。本業はゼロと置く場合を主とし、簿価49.93億円を足す場合を併記して、146,604,800株で割ります。さらに、12月30日のmNAV 1.75倍がそのまま続いた場合(EVを1.75×BTCの時価とし、借入を引き現金を足して株式価値とする)と、2025年のベータ1.91で換算した値を参考に並べました。

シナリオ BTCの時価 株式価値(本業ゼロ) 株価(本業ゼロ) 12月30日比 株価(本業を簿価で加算) 12月30日比 mNAV 1.75倍の株価 12月30日比 参考:ベータ換算
S1下限 43億円 76億円 52円 −79.4% 86円 −65.9% 72円 −71.6% 13円※
S1 51億円 85億円 58円 −77.0% 92円 −63.5% 82円 −67.7% 13円※
S1上限 64億円 99億円 68円 −73.1% 102円 −59.6% 98円 −61.3% 13円※
S2 138億円 178億円 122円 −51.8% 156円 −38.2% 186円 −26.4% 114円
S3 193億円 238億円 162円 −35.6% 196円 −22.1% 252円 0.0% 252円
S4 276億円 326億円 223円 −11.7% 257円 +1.8% 351円 +39.1% 457円

※当ブログの試算。ベータ換算=12月30日の終値×(1+1.91×BTCの変化率)で、※は計算上−95%の下限に張りついた値。保有BTC・株数・現金・借入は直近の開示の水準で固定。本業の価値は時価で評価していない。

まず目を引くのは、横ばいのS3でもNAV方式の株価が162円(本業を簿価で足して196円)と、12月30日の252円を下回ることです。252円を保つには、mNAV 1.75倍という上乗せが続く必要があります。S4でビットコインが2025年の高値に戻っても、本業ゼロのNAVでは223円で、上乗せが続いて初めて351円です。この株価は、ビットコインの値段と同じくらい、上乗せの行方に左右されます。

次に、ビットコインに対する感応度です。ビットコイン(とほかの4銘柄)が10%動くと、株式価値は約20.78億円、1株あたり約14.2円動きます。本業ゼロの株式価値に対しては8.7%、本業を簿価で足した場合は7.2%で、ビットコインの10%より小さい計算です(当ブログの計算)。借入がほとんどないのでてこは効かず、現金と本業の分だけ値動きが和らぐわけです。借入と優先株を抱えるメタプラネットとは、ここが大きく違います。

S1では、BTCの時価が43〜64億円に縮み、現金32.11億円と本業の簿価が下支えになります。mNAVを据え置く計算(72〜98円)は上乗せも一緒に縮むため、本業を簿価で足したNAV(86〜102円)より低くなりました。ベータ換算は−95%の下限に張りつくので、大きな下げに直線を当てはめるのは無理があり、参考にとどめてください。

シナリオを崩す要因

試算は、いくつもの前提の上に立っています。まず為替です。円換算は1ドル156.56円で固定しており、円高になれば円建てのビットコインの価値は下がります。次にmNAVで、上乗せが1倍に近づけば表の「1.75倍」の列より下に、広がれば上に行きます。

保有量も動きえます。10月23日の決議で、2026年6月の定時株主総会までは暗号資産の購入のために株を発行しない方針ですが、手元の現金や株を増やさない方法での買い増し、あるいは売却があれば、表の前提は変わります。決議の条件である経営体制や、総会の後の方針も確かめる必要があります。

本業の損益も無視できません。電力の小売は仕入れ値の市場価格で利益が大きく動き、2021年3月期にはエネルギー事業で−21.48億円の損失を出しました。本業の簿価を足した列は、この事業が簿価程度の価値を保つことを前提にしています。ほかの4銘柄はビットコインと同じ率で動かしましたが、実際の動きは銘柄ごとに違いますし、うち3銘柄は9月30日の帳簿価額が出発点です。NAV方式は、期末の時価評価にかかる法人税などの税金も織り込んでいません。

指数の面では、指数会社のMSCIが2025年10月に、主な事業がビットコインなどのデジタル資産の保有で、その保有が総資産の50%以上を占める会社を指数から外す案について意見を募っており、その暫定リストにリミックスポイントがMicro Cap(超小型株の区分)として載っていました。2025年12月31日時点では、判断は2026年1月15日までの予定と発表されていました。

次の開示で確かめたいこと

まず、2026年に公表される第3四半期の決算(2025年4〜12月)で、10〜12月の評価損の大きさと、12月31日の現金・借入・暗号資産の残高を確かめてください。当ブログのmNAVと株式価値は9月30日の現金で計算しているので、年末の残高で置き直すと数字が変わります。

次に、保有ビットコインの更新と、「希薄化を伴わない方法」の中身です。SBI VCトレードとの連携で始めた運用がどう使われるのか、本業の現金で買い増すのか。そして2026年6月の定時株主総会で、経営体制と株式発行の方針がどうなるか。2026年4月1日を予定する持株会社体制への移行も、ビットコインと本業の関係を変えるかもしれません。

リミックスポイントの株価は、ビットコインと「上乗せ」と本業の三つで読む

リミックスポイントは、分散投資から始まった暗号資産をビットコインに集中させ、自己資金に加えてEVO FUNDの新株予約権と社債を使って、1,411BTCまで積み上げました。新株の値段が1株あたりのビットコインの価値を大きく上回っていた時期には、株を増やしても1株あたりのビットコインは増えました。その後、株価が下がるなかで第25回の約8割を買い戻して消却し、10月23日には暗号資産のための株式発行をしないと決議しています。年末の換算値では、ビットコインは取得原価を約20.35億円下回り、当ブログのmNAVは1.75倍でした。

大家業を長く続けていると、物件を買い進める時期より、立ち止まると決めた時期のほうが、その大家さんの考え方がよく見えると感じます。リミックスポイントの株価を考えるときは、ビットコインの値段に加えて、上乗せ(mNAV)がどこまで残るか、そして電力と蓄電池の本業がどれだけ稼げるかを、セットで見ておきたいところです。

暗号資産を個人で持つか法人で持つかの税金の違いは、当ブログの「仮想通貨は法人でやるべきか?個人でやるべきか?」(2025年7月25日)で整理しています。メタプラネットの資金調達と株価のシナリオを取り上げる回、2社とストラテジーを比べる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価は2025年12月30日(2025年の最終取引日)の終値、ビットコインの価格は2025年12月31日の終値(87,508.83ドル)を1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)で円に換算した値です。

出典・参考

  • 暗号資産購入に関するお知らせ(リミックスポイント、2024年9月26日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120240926589004.pdf
  • 新たな事業(金融投資事業)の開始に関するお知らせ(リミックスポイント、2024年11月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120241113521207.pdf
  • (開示事項の経過)暗号資産の追加購入及び暗号資産の保有状況に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年3月3日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250303586418.pdf
  • リミックスポイント、ビットコイン1,000BTC以上の取得を目指します!(リミックスポイント、2025年6月5日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250605582353.pdf
  • 第三者割当による第24回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行及び新株予約権の買取契約の締結に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年5月19日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250519557067.pdf
  • 第24回新株予約権の大量行使、権利行使完了及び月間行使状況に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年6月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250612588746.pdf
  • 第三者割当による第25回新株予約権(行使価額修正条項付)及び第4回無担保社債(私募債)の発行並びに新株予約権の買取契約の締結に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年7月9日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250709510492.pdf
  • 2026年3月期第1四半期決算補足説明資料(リミックスポイント、2025年8月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250814541502.pdf
  • 第三者割当による第25回新株予約権の取得に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年8月19日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250819544111.pdf
  • 第25回新株予約権の月間行使状況に関するお知らせ(2025年9月分)(リミックスポイント、2025年10月1日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251001566057.pdf
  • 第三者割当による第25回新株予約権の消却に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年10月3日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251002567785.pdf
  • 第三者割当による第25回新株予約権の取得及び消却に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年10月9日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251009570624.pdf
  • エクイティファイナンスによる暗号資産購入の方針に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年10月23日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251023577665.pdf
  • 第三者割当による第25回新株予約権の取得及び消却の完了並びに月間行使状況に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年10月31日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251030583509.pdf
  • (開示事項の経過)ビットコイン(BTC)の追加取得に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年11月4日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251104586007.pdf
  • 代表取締役の異動に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年9月30日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250930565363.pdf
  • SBIグループ傘下のSBI VCトレードと連携し、当社ビットコインの取引・保管・運用を開始(リミックスポイント、2025年9月30日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120250930565648.pdf
  • 2026年3月期第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(リミックスポイント、2025年11月14日)https://f.irbank.net/pdf/20251114/140120251114502454.pdf
  • 2026年3月期第2四半期(中間期)決算補足説明資料(リミックスポイント、2025年11月14日)https://f.irbank.net/pdf/20251114/140120251114502459.pdf
  • 半期報告書 第23期中(2025年4月1日〜2025年9月30日)(リミックスポイント、2025年11月14日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100X4FA.pdf
  • 2025年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)(リミックスポイント、2025年5月15日)https://f.irbank.net/pdf/20250515/140120250515553196.pdf
  • (開示事項の変更)会社分割及び持株会社体制への移行検討に関する一部変更のお知らせ(リミックスポイント、2025年11月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251114502467.pdf
  • (開示事項の変更)第24回新株予約権(行使価額修正条項付)の資金使途変更に関するお知らせ(リミックスポイント、2025年12月1日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251128511905.pdf
  • 中期経営計画(2027-2029)(リミックスポイント、2025年12月9日)https://www2.jpx.co.jp/disc/38250/140120251208516283.pdf
  • リミックスポイントの暗号資産の購入・保有に関する各適時開示(2024年9月27日〜2025年11月4日)の一覧:IR BANK「リミックスポイント(3825) 適時開示一覧」https://irbank.net/3825/ir
  • Consultation on Digital Asset Treasury Companies(MSCI、2025年10月)https://www.msci.com/downloads/web/msci-com/indexes/index-resources/consultation-on-digital-asset-treasury-companies-2025.pdf
  • 株価:Yahoo!ファイナンス「リミックスポイント(3825.T)」時系列(2025年12月30日までの終値)https://finance.yahoo.co.jp/quote/3825.T/history?from=20230101&to=20251231&timeFrame=m&page=1
  • ビットコイン・イーサリアムの価格:Yahoo Finance「BTC-USD」「ETH-USD」の価格履歴(2025年12月31日までの終値)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1mo&period1=1388534400&period2=1767225600 、https://finance.yahoo.com/quote/ETH-USD/history/?frequency=1mo&period1=1733011200&period2=1767225600
  • 株価(2025年の終値の高値):Yahoo!ファイナンス「リミックスポイント(T)」日次の時系列(2025年1〜2月)https://finance.yahoo.co.jp/quote/3825.T/history?from=20250120&to=20250220&timeFrame=d&page=1
  • 2013年12月〜2014年のビットコイン価格:StatMuse Money「Bitcoin highest closing price in 2013」 https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-highest-closing-price-in-2013 、「Bitcoin monthly closing price 2014」 https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-monthly-closing-price-2014